[原子力産業新聞] 2004年7月1日 第2241号 <3面>

[IAEA] アジア、原子力開発の中心に

 国際原子力機関(IAEA)は6月26日、世界の原子力発電開発の中心がアジアに移っているとする調査結果を発表した。これは、今年6月時点での世界の原子力発電の現状をまとめたもの。経済発展に支えられ、世界で最近運開した原子力発電所31基のうち22基がアジアに集中、また世界で建設中の27基のうち18基がアジアに集まっているとしている。

 現在、世界30か国で442基の原子力発電所が運転、世界の電力需要の16%を供給しているが、新規や建設中の原子力発電所のほとんどがアジアに集中していると指摘。特に、世界人口の40%という巨大な人口を抱える中国とインドで原子力発電拡大の計画が進んでいることに注目している。

 西欧四か国が原子力発電からの撤退を決めるなど「欧州と北米における原子力発電の将来は明らかではない」としながらも、フィンランドで原子力発電所新設が決まり、フランスも退役が近づいた原子力発電所の建て替えを決めつつあり、北米での状況も近い将来変わる可能性があるなどとしている。

 IAEA報告書は、二酸化炭素排出量削減における原子力発電の役割を強調、原子力が年間六億トンの二酸化炭素排出を防いでいるとし、これは京都議定書による削減目標の2倍になると述べている。

 先進諸国における電力自由化について、IAEA報告書は、「うまく運転されている原子力発電所の収益性と価値を高めているが、一方、新規原子力発電所への投資魅力を失わせている」と指摘。運転中の原子力発電所については、ほとんどが建設費の消却を終え、「設備利用率向上がそのまま利益向上につながっている」とした。1990年に71%だった世界の原子力発電所平均利用率が、2003年には八四%へ向上、これは、コストをかけずに百万kW原子力発電所三十四基を建設できたことに相当すると述べている。

 米国ではここ数年、原子力発電所運転コストは2.0セント/kWhまで下がっており、最も安価なプラントでは1.2セント/kWh。さらに、原子力発電は燃料費の変動に強いことを指摘、燃料費が倍になった場合、原子力発電では発電コストが2〜4%増加するのに対し、天然ガス火力では60〜70%増加するとしている。


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