[原子力産業新聞] 2004年7月1日 第2241号 <4面>

[日立製作所] ABWRをシリーズ化 電力自由化とアジア地域への対応強化

 日立製作所は国内の電力自由化、アジア地域での原子力発電所の新増設などに対応し、原子力発電プラントABWRシリーズを大幅に拡充する。電気出力60万kW級「ABWR−600」(=図)および同90万kW級「ABWR−900」のシステム設計をこのほど完了、開発中の170万kW級「ABWR−II」と合わせ、近く合計4システム体制とする。また、革新的中小型炉として40万kW級の自然循環型も開発を進める。

 ABWRシリーズの大幅拡充により、国内外の原子力発電プラントに対するニーズの多様化に対応する。国内では電力自由化にともない、投資額の抑制や早期回収など投資リスクの低減が求められており、中型プラントの製品化により電力需要に即した分散投資を可能にする。

 一方、今後大幅な新増設が予測されるアジア地域では、送電網などのインフラ整備に制約がある地域も多く、分散電源としてのニーズがある。「135万kW級とともに60万kW級、90万kW級プラントの投入により、国内外での受注活動において強いカードを持つことができる」(守屋公三明・原子力計画部長)という。

 システム設計を完了した「ABWR−600」と「ABWR−900」は、規模の経済性の不利を克服し、現行135万kW級ABWRに匹敵する経済性を達成するため、設備の簡素化、機器集中配置によるコンパクト配置及び標準化配置のコンセプトを採用した。「これまで原子力発電プラントは個々のユーザー毎にカスタムメイド的要素が強かったが、新プラントでは発電のコア部分を標準配置としたセミカスタムのコンセプトを導入した」(同)という。

 建設スケジュールにもよるが「ABWR−600」2基とABWR1基の建設費用は、ほぼ同等を達成しており、建屋容積と主系統物量はABWRに比べほぼ半減としている。また、建設工期は原子炉建屋の基礎コンクリート工事着手から燃料装荷までで初号機が34か月、2号機以降は32か月と、ABWRに比べ20%前後短縮の見通しを得ている。

 「ABWR−600」は9×9燃料を採用し、燃料集合体数376本、原子炉再循環系インターナルポンプ四台、主蒸気配管700A×2本で、安全系は動的システム四系統、タービン設備は52インチ長翼タービンの一車室構成、復水器を一胴化し、給水加熱器も一系列化とした。

 

 「ABWR−900」は10×10燃料、燃料集合体数508本で格子ピッチを6.2インチに拡大することにより、大型炉並みの炉心特性を維持し、炉心の出力密度を増加させた。インターナルポンプと主蒸気ラインは600と同様で、安全系構成は静的システム2系統+動的システム4系統、タービン設備は52インチ長翼タービンの二車室構成、復水器は二胴式。いずれもABWRの実証済み技術を基本としており、発電所の建設・運転に係わる許認可の取得でも対応が容易としている。

 インターナルポンプを使用しない自然循環方式による40万kW級中小型炉は日本原子力発電との共同開発で、建屋容積はABWRのほぼ三分の一。今後、自然循環炉心関連技術の実証を進める。


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