[原子力産業新聞] 2004年7月8日 第2242号 <1面>

[放医研] HIMACが10周年

放射線医学総合研究所は2日、東京・大手町の経団連会館で重粒子線がん治療装置(HIMAC)10周年記念講演会を開催した。約560名が参加、臨床成果や普及用小型加速器開発など傾聴した。

佐々木康人・理事長は、「様々な方々のご協力により10周年を迎えられた。今後、装置の普及を目指し、小型器の開発を一層推進する」と挨拶。来賓の結城章夫・文部科学審議官は「重粒子線がん治療装置の普及に対する要望は高く、今後、人材育成にも力を尽くして欲しい」と述べた。

特別講演では有馬朗人・参議院議員が「日本の科学技術行政とHIMAC」と題し、基礎科学の重要性を強調。「基礎科学と技術の協調で産業が発展する。日本は技術中心だが、基礎科学も極めて重要」とした。

放医研からは辻井博彦・重粒子医科学センター長が「HIMACの臨床成果」、山田聰・加速器物理工学部長が「普及に向けた装置小型化の研究」などについて講演した。

辻井センター長は、昨年度中に1800名を超える症例登録があり、昨年11月から開始された高度先進医療でも60名あまりが治療、など最近の状況を報告。山田部長は5、6年後に実用化を目指している普及用小型器を紹介した。同器は建屋面積が2700平方メートル(45m×60m)とHIMACに比べ約3分の1、最大エネルギーも同2分の1とし、加速可能イオンを炭素12に限定する。

このほか海老原敏・国立がんセンター東病院名誉病院長が「外部から見たHIMAC」として、スキャン方式導入への期待などについて講演、「重粒子線治療―今後の展望」と題するパネル討論も行われた。


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