[原子力産業新聞] 2004年7月8日 第2242号 <2面>

[資源エネ庁] コスト試算資料の存在判明

経済産業省・資源エネルギー庁は5日、1994年2月の総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題作業グループにおいて、使用済核燃料の直接処分と再処理のコスト比較に関する参考資料を提出、検討していたことが判明したと発表した。

資料は当時の事務局が作成、会合は非公開で開催されていた。同資料では、従来OECD/NEA試算を引用してきたが、わが国の実情を考慮し試算したもので、フロントエンドも含めた核燃料サイクル関連コストは、割引率5%で直接処分1・23円/kWh、国内再処理2・3円/kWhと算出。しかし検討の結果、最終処分費の見積りが極めて不透明で、比較は困難との結論になった。

経産省は、今年1月に総合資源エネルギー調査会電気事業分科会が再処理コストを算定するまで、核燃料サイクルの経済性を試算していない、としてきた。今年3月の参議院予算委員会でも直接処分費に関する質問に対し、当時の日下一正・資源エネルギー庁長官が試算していない、と答弁した。

原子力政策課によると、今月1日に報道関係から94年当時にコストを比較したのでは、との取材があり、保管資料を調査したところ、今回の資料があることが判明したという。今後、当時の算出基準などを調査し、新たな事実が判明すれば公表する、としている。また、同資料とその経緯について、6日開催の原子力委員会定例会議に報告した。

なお、経産省は6日、国会答弁当時の日下長官(現経済産業審議官)を省内内規で最も重い訓告処分に、寺坂信昭・電力ガス事業部長(現経済産業政策局審議官)と安井正也・原子力政策課長(現欧州中東アフリカ課長)を口頭の厳重注意処分とした。

同問題について中川昭一経済産業相は、柏崎刈羽原子力発電所視察後、記者団からの質問に対し、「誠に申し訳ない」と陳謝した。

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原子力委員会は6日の定例会議で、1994年2月の長期計画専門部会第2分科会において、使用済核燃料の直接処分と再処理のコスト比較を試みた資料があることを明らかにした。

資料はOECD/NEAのコスト比較を標準ケースとし、MOX燃料加工費、再処理費、廃棄物処分費などのコスト要因が変化した場合に、どのような影響を受けるか感度分析したもの。変化の想定は標準ケースの3倍及び5倍とし、各費用がともに標準ケースの3倍とした場合、発電コストは直接処分に比べ約10%、同5倍の場合は14%高くなる、としている。

同分科会は最終的な報告書で、技術的な課題などがあり厳密なコスト比較は困難である、とした。当時の分科会は非公開で開催、一定の結論が出された際には広報発表していた。原子力委員会では、独自にコスト比較したというレベルではなく、参考程度に試算したレベル、としている。


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