[原子力産業新聞] 2004年7月15日 第2243号 <3面>

[米・カーネギー国際平和財団] 濃縮・再処理の停止提言

米国のカーネギー国際平和財団は、6月21、22の両日、首都ワシントンのロナルド・レーガン国際貿易センターで、23か国から約700名の参加者を集め、「2004年カーネギー核不拡散国際会議」を開催。商業用ウラン濃縮と再処理によるプルトニウム分離の3〜5年間の中止等を呼びかける報告書案「普遍的な順守――原子力セキュリティ戦略」を発表した。

会議には、エルバラダイIAEA事務局長、ブリックス国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)前委員長、ケネディ上院議員、ナン前米上院軍事委員長などが、キーノートスピーカーとして登壇。エルバラダイ事務局長は、2005年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議にむけて、「核不拡散枠組みの大幅な変更が必要なことが、明らかになりつつある」と述べた。

カーネギー財団が発表した報告書案は、核兵器を「持つ国」と「持たない国」に分ける現システムの制約を指摘、その上で、核兵器国、非核兵器国、軍事的非国家行為主体(ノン・ステイト・アクター)などすべての関係者に、新たなバランスと義務を打ち立てる必要があると強調。順守すべき義務として、@新たな核兵器国の出現を認めないA機微な核物質の保安強化B技術や核物質の違法移転の禁止C核兵器の政治・軍事的価値の減価D地域紛争解決へのコミット――等を挙げた。

今後採るべき戦略としては、@全世界的な脅威評価の実施A核物質盗難への罰則強化や安保理による査察と制裁の強化B核兵器級核物質の保安強化と生産・使用の中止C核兵器の魅力の減価――などを提言。

報告書案は、核兵器に利用可能な物質の供給を止めるため、ウラン濃縮とプルトニウム分離の「停止」を提言、その代わりに、国内での核燃料生産を行わない国への核燃料供給の「保証」を提言している。

濃縮停止は、米国とロシアにある核兵器由来の余剰高濃縮ウランを使い切るために提案されているもの。3〜5年間、米国と他の高濃縮ウラン製造能力保持国で、すべての濃縮活動を停止、低濃縮ウランの濃縮も一時停止する。その間、ロシアと米国の余剰高濃縮ウランを希釈して原子力発電所等に供給する。

一方、再処理によるプルトニウム分離については「数十年間にわたり」停止、その間に核不拡散抵抗性を持つ核燃料サイクルを開発するとしている。

同報告書は、長期的に濃縮は、ウレンコのような多国籍取り決めや、国際機関の管理下でのみ可能にする「制度的な高い障壁」を設けるよう提言している。


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