[原子力産業新聞] 2004年7月29日 第2245号 <2面>

[原子力発電整備機構] 伏見健司氏に聞く

今月1日付けで、原子力発電環境整備機構(NUMO)の新理事長に伏見健司氏(=写真)が就任した。「『地域あっての原子力』を常に基本に据える」、という伏見理事長に、NUMOの現状、今後の事業指針などについて聞いた。

 ―新理事長の抱負から

最近、原子力のバックエンドが話題になるが、いわばそのアンカーである高レベル放射性廃棄物の最終処分という重要な事業に携わることになり、責任の重さと同時にやりがいを感じている。NUMOの事業は、前理事長の言葉を借りれば、ようやく球根が出来てきた段階だが、何とか芽が出て花が咲くようにしたい。

―NUMOの現状は

NUMOは2000年10月に設立され、02年12月から最終処分施設建設地選定の最初の段階である設置可能性を調査する区域の公募を開始した。選定方法は処分法に規程されていないが、公平性、透明性、地域の自主性尊重などの観点から決定した。公募方式は国際的にも初めての試みとして注目を集めている。

―公募に対する反応は

公募関係書類は、全国3200の市町村にお送りした。同時にほとんどの県に説明にお伺いし、その後も説明を求められれば自治体に限らずどちらにでもお伺いしている。また、テレビ、新聞、雑誌、ホームページなどでも広く公募を呼びかけている。現在までに正式な応募はないが、多くの方から問い合わせを頂き、実際にご検討頂いている市町村もある。今年が応募元年になることを期待している。

 ―今後の技術的な課題について

基本的にはこの事業は国内外で検討されてきた技術で実現できるが、今後は特定地域での検討を進めていく必要があること、100年以上も続く事業であること、などを考えると引き続き技術開発が必要になる。

 ―海外機関などとの技術協力の推進は

各国技術の相互評価や議論は不可欠、これにより我々の技術の高さが維持、確保される。11か国の地層処分の実施主体で構成する放射性物質環境安全処分国際協会(EDRAM)に加盟し、情報交換に努めるとともに、フィンランド、スイス、仏国、米国、英国などの関係機関と幅広く協力関係を構築している。

 ―情報公開への取組みは

情報公開はこの事業を進める上で重要な柱と考えており、電子メールでの質問などにも積極的に対応している。また、外部委員による情報公開適正化委員会を開催し、意見の反映に努めている。

 ―原子力長計への要望は

バックエンドコストや再処理などの問題は、我々の事業にも大きな影響を持ち注目しているが、最終処分事業は既に制度が確立し実施段階であり、費用も手当てされている。エネルギーセキュリティーや資源の有効活用、環境への影響、技術継承など多面的で長期的な議論を期待しており、政策の継承性、一貫性という点にも留意をお願いしたい。

―原子力施設の立地業務について

「地域あっての原子力」という考え方を常に基本に据え、地域との信頼関係をしっかり堅持していくための日頃の努力が大切。地域の方のご意見に真摯に耳を傾け、情報公開を徹底し、事業内容の透明性を確保する必要がある。最終処分事業は100年にもおよぶ事業であり、地域と事業の発展がともに図られるような長期的なビジョンの策定も必要である。NUMOは処分地の建設が決定すれば、本社も現地に移転する。職員は文字通り住人となって、自分達の問題として地域の発展を考える姿勢が求められる。そういう真摯な姿がなければ、事業に対する理解も到底得られないと考えている。

伏見氏は1943年東京都生まれ、67年東京都立大学法学部卒、同年東京電力入社、94年東京東支店江戸川支社長、97年立地環境本部立地部長、01年取締役立地環境本部副本部長、03年常務取締役立地地域本部副本部長


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