[原子力産業新聞] 2004年8月5日 第2246号 <3面>

[米国] 「ユッカマウンテン」など争点

米国ボストンで開かれていた米民主党全国党大会は、7月2十8日、大統領候補にケリー上院議員(60、=写真右)、副大統領候補にエドワーズ上院議員(51、=同左)を正式に選んだ。選挙戦は本格的に始まったばかりであり、内政・外交について具体的な政策は必ずしも明らかになっていないが、同氏らのこれまでの発言などから、エネルギー、原子力、核不拡散などの政策を探る。

▽エネルギー政策―再生可 能エネを20年に20%へ

エネルギー政策全般について、ケリー氏は、ブッシュ政権が「一部のエネルギー企業を優遇している」と批判、エネルギー政策を「科学にもとづく、オープンで透明なプロセス」とするよう主張、また、大企業の「市場操作から消費者を保護する」と公約する。

輸入石油への依存度を減らすための短期的な政策として、「石油供給を管理するため、石油輸出国機構(OPEC)と新たな協力関係を築く」とし、長期的な政策としては、自動車の燃料効率の向上、国内で生産可能な再生可能エネルギーとして2012年までに50億ガロンのエチルアルコールの利用、2020年までに再生可能エネルギーを20%のシェアへ増やすことを掲げる。

製造業でのエネルギー効率を改善するため、水素の利用研究に「50億ドル(約5500億円)を注入(ブッシュ政権は17億ドル)」、エネルギー効率に優れた乗用車を開発する会社に「100億ドルの税制優遇」なども。

▽原子力発電―ユッカマウンテン処分場に反対

ケリー氏がユッカマウンテン使用済み燃料処分場建設に反対していることは知られているが、原子力発電全般に対する態度は明らかになっていない。

原子力発電に対する言及は少ない。今年3月30日にカリフォルニア州で、ブッシュ政権のエネルギー政策について、「巨大石油会社が密室で書き上げた政策を終わらせる」として、チェイニー副大統領が中心となって起草した国家エネルギー政策を「石油、ガス、電力、原子力産業界への大盤振る舞い」と、その密室性を批判。同政策が環境を脅かし、汚染を引き起こすエネルギー源への依存度を増すと批判している。これはむしろ、民主党の伝統的な「反大企業」路線を踏襲したものと見られる。

ケリー氏のユッカマウンテン処分場への態度はより明白だ。同氏は今年5月、ネバダ州のラスベガス・レビュー・ジャーナル誌に寄稿、「私はこれまで、この計画に反対の投票を行ってきたし、大統領として、これに反対するため戦う」とし、同計画が「ネバダの人々の安全より、原子力産業界の利益を優先するもの」と批判。

ケリー候補は反対の理由として、使用済み燃料の処分用コンテナが腐食し放射能漏洩の可能性があると議会諮問委員会が報告していること、米原子力規制委員会(NRC)が米エネルギー省(DOE)に対し、許認可申請に必要な科学的データが十分でないと警告していること、ユッカマウンテンで試掘を行っている作業員が「危険な埃と鉱物」のリスクを受けていることなどを挙げた。このことからケリー氏は、「処分場計画をきっぱりとやめることが必要」としている。

しかし、米国では連邦政府が使用済み燃料の処分に法的責任を負っていることについて、同氏は処方箋を示していない。

▽核不拡散と原子力セキュリティを強調

核不拡散や原子力施設のセキュリティ強化について、ケリー氏は7月29日、民主党大会での大統領候補受諾演説の中で、「我々は、核拡散に対する全世界規模での戦いを先導しなければならない」とし、核兵器を「世界で最も危険な人々の手が届かないよう」することの重要性を強調。さらに国土安全保障との関係で、米国に入港する船舶の95%が何ら検査を受けてないと指摘、「原子力および化学プラントを十分な防護無しに放置すべきではない」と述べた。

11月2日の大統領選に向けて、原子力に関しても、これから具体的政策が出てくるものと予想される。


Copyright (C) 2004 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.