[原子力産業新聞] 2004年8月26日 第2248号 <3面>

[NASA・DOE] 宇宙用原子炉開発で協力

米航空宇宙局(NASA)と米エネルギー省(DOE)は5日、木星氷衛星周回探査機(JIMO)に使われる宇宙空間用の民生用原子炉開発に関する協力覚書(MOU)に署名した。NASAは今後5年間に30億ドル(約3300億円)の予算を投入する。

今回の覚書は、NASAのJ・オキーフ長官と、DOE国家核安全保障局のF・ボウマン海軍用原子炉担当副局長が調印したもの。

両者は、NASAの「プロメティウス計画」の一環として、宇宙用原子炉の開発、設計、製造、運転を行う。同計画は、太陽系探査に向け、イオンエンジンや各種探査装置と通信機器への電力供給のための発電用原子炉を開発するもの。

JIMOは、ガニメデ、エウロパ、カリストなどの木星の氷衛星を探査する予定で、2012年以降の打ち上げを予定する(写真は木星近辺をイオンエンジンを使って飛ぶJIMOの想像図、NASA提供)。

太陽から遠く離れた木星では、太陽電池からは観測機器や通信機器に十分な電力を供給できない。これまでに外縁惑星に飛行した衛星は、プルトニウム238等を利用するアイソトープ電池を利用しているが、出力は数百kW、寿命は数年間に限られている。また、遠い外縁惑星への飛行には、比推力の高いイオンエンジンが適するが、大出力の電力供給源が必要だ。

NASAのプロメティウス計画では、電気出力50〜250kW、寿命10年以上の原子炉開発が進められる。NASAは2004年に2億7900万ドル(約307億円)、今後5年間に30億ドル(約3300億円)の予算を投入する。

NASAのオキーフ長官は、「この計画により、これまで何十年間も太陽系探査の障害となっていた、宇宙での電力供給問題を解決する、安全で信頼性の高い発電システムが開発できる」と期待を表明した。

DOEが海軍省と共同運営している海軍用原子炉部門は、これまで50年以上の原子炉開発経験を、安全で頑丈、信頼性が高くコンパクトで寿命が長く、困難な条件下で運転が可能な宇宙用原子炉の開発に生かすとしている。


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