[原子力産業新聞] 2004年9月30日 第2253号 <3面>

[米・DOE] 十分な競争力と結論

米エネルギー省(DOE)は20日、シカゴ大学が行った原子力の経済的競争力に関する初の包括的調査の結果を発表、原子力発電所が数基以上建設される場合、発電コストはガス火力や石炭火力発電に匹敵しうるとした(=左表)。

この調査はDOEの委託により、G.トリー・シカゴ大名誉教授とD.ジョーンズRCF経済・金融コンサルティング社副社長を中心とするシカゴ大学のチームがまとめたもの。

原子力に対する連邦政府の経済的補助がない状態で、新規原子力発電所の平準化発電コスト(LCOE)は、初期の高建設費がこなれた後では、kWhあたり3.1〜4.6セント(3.6〜5.1円)になると予想。石炭のLCOEはkWhあたり3.3〜4.1セント、天然ガスは3.5から4.5セントとしている。

現在、原子力は米国の電力需要の20%を占め、石炭の50%に続く。天然ガスは17%。

報告書は、原子力発電所新規建設への最大の経済的障害となるのは、初期の数基の高建設費・高運転費への対応だとする。最初に導入される数基の原子力発電所では、初号機エンジニアリングのコストにより、第1号機の建設費は約35%高くなり、原子力の競争力に悪影響を与えると指摘。さらに、新原子力発電所への投資のため発行される債券や株式に、リスクプレミアムとして3%程度が上乗せされ、原子力の経済性に悪影響を与える恐れがあるとする。

初期の数基の発電コストは、kWhあたり4.7〜7.1セント(5.2〜7.8円)と予想され、石炭火力やガス火力より大幅に割高だ。初号機用エンジニアリングを含む高コストの建設費は、初期プラントで償却され、資金調達費も下がると予想、3、4号機以降の発電コストは、他電源と十分に競争力を持つとする。

原子力の競争力を高めるための政策としては、政府の融資保証、加速償却、投資税控除、生産性控除などが考えられ、これによってLCOEは、kWhあたり3.2〜5.セントになるとしている。

地球温暖化防止対策として、厳しい政策が実施され、かつ二酸化炭素分離・隔離が技術の発達でコストが下がった場合、石炭火力発電コストは9.1セント/kWh、ガス火力は6.8セント/kWhへ上昇、原子力は完全に競争力を持つとしている。


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