[原子力産業新聞] 2004年10月7日 第2254号 <3面>

[寄稿・ウィリアム ビーチャー氏] カナダと米国で具体的な動き始まる(上)

米国とカナダでは、新しい原子力発電所の建設を検討してはどうかとの議論が盛んに行なわれるようになってきた。このような積極的な検討に関わっている関係者には、米国、カナダ、日本、英国、およびフランスの大手企業も含まれている。

とはいうものの、米国でもカナダでも、まだ新たな原子力発電所の建設開始が約束されているわけではない。しかし、何百万ドルもの費用をかけて、大手の企業の参加を得、真剣に準備段階が進められていることを考えると、北米において原子力がよみがえる日はそう遠くないかもしれない。

建設決定については、米国よりもカナダの方が一歩進んでいるように見受けられる。カナダでは、このような決定は連邦レベルではなく、州レベルで行なわれる。そして現在、原子力が州内の電力需要の45%を供給し、2007年までには大気汚染の原因となっている石炭の火力発電所5か所すべてを段階的に廃止することを約束しているオンタリオ州は、新たな原子力発電所建設を進めるか否かについて、今年秋には判断を下すものと見られている。

国有会社であるカナダ原子力公社(AECL)は、改良型CANDU原子炉であるACR―700を開発、2006年までに同炉に対して規制当局からの承認を得たい考えである。この原子炉は、もしオンタリオ州が新しい原子力発電所を建設するとなれば、採用される可能性が非常に高いモデルである。

一部の予想によれば、カナダは新しいCANDU炉の建設を、2008年までに、5大湖の湖畔で開始する可能性があるという。これは、米国で新原子力発電所が最も早く建設される場合よりも2年早い。

米国で、新たな原子力発電所建設の検討に参加しているコンソーシアムが3つある。

第1のコンソーシアムは、テネシー峡谷開発公社(TVA)が中心となっているもので、他にGE社、ベクテル社、東芝、核燃料製造会社のUSECが参加している。このグループは、アラバマ州のベルフォンテ原子力発電所の完成を目指し、DOEに支援を申し入れている。ベルフォンテ発電所の建設は1988年に中断されたが、施設は良好な状態に保持されている。DOEは同研究にかかるコスト425万ドルのうち、約半分を負担すると約束したという。

2つ目のコンソーシアムは、「ニュースタート・エナジー・デベロプメント」と呼ばれているグループで、参加企業は、エクセロン社、エンタジー社、コンステレーション・エナジー社、サザン社、デューク・エナジー社、TVA、仏電力公社(EDF)の在米子会社、GE社、そしてウェスチングハウス・エレクトリック社である。TVAとGE社は両方のグループに参加している。

3つ目のグループは、ドミニオン・リソーシズ社、日立アメリカ、ベクテルおよびAECLの米国支社から構成されており、ACR―700の使用を提案すると見られている。(続く)

ウィリアム・ビーチャー氏

コロンビア大学院卒。ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズなどで記者。1983年に国内報道部門でピューリツァー賞受賞。1993〜2003年まで米原子力規制委員会(NRC)広報部長。現在はディレンシュナイダー・グループ代表。


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