[原子力産業新聞] 2004年10月14日 第2255号 <1面>

[原子力委員会] 策定会議、コスト試算踏まえ 再処理路線に支持集まる

 原子力委員会の新計画策定会議と技術検討小委員会は7日、それぞれ第9回と第6回会合を開催した。小委員会で、核燃料サイクルに関する4種類の基本シナリオについて、全量再処理が1kWhあたり1.6円、全量直接処分が0.9〜1.1円とするコスト試算内容を了承。これを受け策定会議では、「全量再処理政策の変更が必要なコスト差ではなく、国民の支持を得られるレベル」、「エネルギーセキュリティーや循環型社会確立など総合的な観点から、現行政策堅持の方針を早期に示すべき」など再処理支持の意見が大勢を占めた。

 小委員会が取りまとめた核燃料サイクルコストの対象は、2002年度〜2060年度の原子力発電に係わるもの。全量再処理は1.6円/kWh、全量直接処分が0.9〜1.1円/kWh。全量直接処分は最も割安な硬岩・収納本数2・サイト数1のケースで0.9円/kWh、最も割高な軟岩・収納本数2・サイト数2のケースで1.1円/kWhとなる。再処理と直接処分のコスト差による負担は、一世帯当たり年間600円〜840円(月間使用量300kWhを想定)とする。

 発電コストは、サイクルコストを基に総合エネ調電気事業分科会の試算を活用して算出。これに六ヶ所再処理工場の廃止措置費用や同工場廃止に伴う原子力発電所運転停止に対処するための火力発電関連費用を加えた発電コストは、全量再処理が割安になる。

 経済性評価の提出を受け、策定会議は本格的な総合評価の議論に入ったが、「安全保障が最終目標で再処理政策は必要。立地地域との信頼関係も重要」(河瀬委員)、「循環型社会のためのこの負担なら国民の支持は得られる」(笹岡委員)、「全量再処理の優位性は明らかで、これを選択することを早期に示して欲しい」(末永委員)、「自動車や家電のリサイクル費用と比較して再処理の負担は容認できるレベル」(井上委員)、「政策変更を検討するコスト差ではなく、変更の理由は見当たらない」(草間委員)、「地元の立場からは、直接処分はマイナスばかりで、しかも試算以上に割高になると考える」(橋本委員)など、再処理支持が大勢。政策変更コストの取扱いについて、一部議論があるものの、今会合では明確に政策変更を求める意見は出されなかった。

 近藤議長は会議後の会見で、「核燃料サイクル政策は今後3回程度の議論により、意見集約が可能」とした。次回会合は今月22日に開催予定で、今回の議論を踏まえ、同会議として取りまとめを目指す素案が示される見通し。


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