[原子力産業新聞] 2004年10月14日 第2255号 <3面>

[寄稿] 新規原子力の建設 金融業界からも支持の声が上がる(下)

 エクセロン社、エンタジー社およびドミニオン社は、以前NRCに対して、既存の原子力発電所サイトに新たな原子力発電所を建設する場合に備えて、早期サイト許可を「蓄え」ておくのを認めるよう求めた。これは、その時点においては建設を進めるかどうかを決めなくても良いものだ。ただ、具体的にどのような改良型原子力発電所を考えているのかを明らかにしたのは、ドミニオン社のみである。

 米国にもっと原子力発電所を増やすべきだと提唱する人々は、原子力が温室効果ガスや空気中の微粒子問題を軽減し、輸入石油への依存度を低減、減少していく天然ガス資源を家庭の暖房や化学製造業に絞って利用することができ、増え続けるエネルギー需要に対応できると主張する。

 新規原子力発電所に反対する人々は、ネバダ州ユッカマウンテンの地下に建設される中央処分場に使用済み燃料を埋設することが安全かどうか判断が出ていないこと、また原子力発電所というものは基本的に安全ではないとし、さらに原子力発電所や輸送中の使用済み燃料はテロリストの標的になる可能性があることなどを強調する。

 しかし、建設を進めるかどうかの判断はおそらく、何よりも経済的、市場的判断によって下されるだろう。原子力発電所は建設に多額の費用がかかるが、いったん建設されてしまえば、運転コストは、石炭やガス、石油を使う火力発電所よりも安い。

 大手証券会社の共同経営者で、名前が社名にもなっているルイス・リーマン氏は、最近のウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿し、「平均的な原子炉の場合、熱量100万BTUあたりの核燃料の費用は50セントだった。一方、石炭は85セント、天然ガスは4ドル90セント、原油は4ドル50セントだった」と書いている。同氏は、ブッシュ政権と同様、新たな原子力発電所の建設を主張している。

 エンタジー社に設けられた原子力委員会で委員長を務めるドナルド・ハインツ氏は、最近のコメントの中で、「おそらく最も大変なのは、これまでの停滞した状況を打ち破ることだろう。まず新しい発電所を2〜3か所建設し、我々が許認可プロセスをこなせることを立証し、コストやスケジュールの目標も達成できることを証明する。最初の何か所かを建設できれば、さらに新たな103基の建設も可能だと私は自信を持っている」と述べている。

ウィリアム・ビーチャー氏
コロンビア大学院卒。ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズなどで記者。1983年に国内報道部門でピューリツァー賞受賞。1993〜2003年まで米原子力規制委員会(NRC)広報部長。現在はディレンシュナイダー・グループ代表。


Copyright (C) 2004 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.