[原子力産業新聞] 2004年10月14日 第2255号 <4面>

[レポート] 美浜事故 関電取りまとめの概要@

既報の通り、関西電力は9月27日、美浜発電所3号機2次系配管破損事故に関するこれまでの原因調査の状況、当面の取るべき対応などについて、取りまとめを発表した。事故発生の状況、事故に関する評価、原因調査および、再発防止策からなる同報告の中から、本紙では今号、次号にわたり、再発防止策の「当面とるべき対策について」および「今後の課題」を紹介する。

当面とるべき対策について

2次系配管肉厚管理業務は、プラントメーカ、協力会社において適切に仕組みが確立されていると評価し、業務委託を行っていた。しかしながら、今回の事故は、この仕組みの中で、当初、プラントメーカが当該部位をリストアップしていなかったこと、協力会社に移管後、この抜け落ちが発見された時点で当社に報告されなかったこと、当社は抜け落ちがあることについてチェックを行ってこなかったことが主たる原因であり、さらに、類似箇所の点検漏れに関して電力間の水平展開が不十分であったこと、加えて、本件に関する契約において、PWR管理指針に基づき点検箇所を見直すことが明示的に記載されていなかったことも問題であると考えられる。

これらを踏まえると当社が自ら主体となって管理を行うこととし、再発防止及び信頼回復の観点から以下の対策を実施する。

なお、今後の調査結果とその分析から抽出される必要な対策については、適宜追加することとする。

(1)体制強化

社長が先頭に立って事故原因究明、再発防止対策に取り組むため、社長を原子力事業本部長とした(9月21日決定)。

また、福井県に技術系役員が常駐し、技術的事項の的確な対応を行っている。

(2)労働安全の確保

a.事故後直ちに実施した対策

事故後直ちに、運転中のプラントへの立ち入り制限を実施した。やむを得ず作業が必要な場合には、防火服の着用等万全の措置を実施する。

また、2次系配管の健全性が確認され、協力会社の方々、地元の方々のご理解が得られるまで定期検査前準備作業を実施しないこととし、従来定期検査前準備作業として行っていた作業をプラント停止後に実施している。

今後、定期検査においてプラント運転中に事前準備として行っていた作業の内容、優先度及び重要度を精査し、この検討に基づき、必要な作業については制限事項と安全確保策を明確にするなど定期検査前準備作業の改善を図り、協力会社、地元の方々のご理解を得ていくこととする。

b.被災者救出活動の確実な実施

被災者情報に重点をおいた事故内容の医療機関等への伝達方法に関し、管理区域外での災害においても、医療機関等に確実に状況を把握して頂くため、被ばく又は汚染がないという情報を的確に伝達できるように社内標準へ追加した(9月24日決定)。

救急通報の徹底、救出活動にあたる際の注意事項の確認、消防・救急との連携強化を行うとともに、作業エリアへの入域システムにより、作業者名と協力会社名を把握した上で、作業責任者が直ちに安否確認を実施することで、現場での作業人員の的確な把握を行う運用とする(9月24日決定)。

また、発電所が要請した救急車等の緊急車両が地元を通過する場合、その状況について通過地域周辺の方々に理解して頂けるよう地元への連絡方法について検討し、実施する(9月末目途)。

c.作業者への安全上重要な事項の周知徹底

今回の事故を踏まえ、発電所内の全ての作業者に対して美浜3号機の事故に係る状況を説明し、さらに安全に対する理解を促すこととし、プラントの運転状態に応じた危険箇所の周知等を行うよう、各発電所作業担当箇所に周知した(9月8日決定)。

(3)2次系配管肉厚管理における外注管理の徹底した見直し

 今後、当社が肉厚管理を自ら実施することとし、協力会社から当社へ移管するまでの間は当面の対策として外注管理を強化する。

a.当面の対策

 (a)当社主体的管理の実施

 b項で示す抜本的見直しを行うまでの間、当社が主体的に管理することに改め、以下の対策を実施することとした(8月27日決定)。

・スケルトン図(配管立体図)とPWR管理指針を照合し、肉厚管理が必要な箇所の管理票への反映状況を確認し、管理票を整備した。

・当社の5ヵ年点検計画に基づき、当該定期検査の点検計画作成を協力会社に依頼し、協力会社作成の点検計画をチェックの上、協力会社に点検を依頼することとした。

・点検結果の評価についても、協力会社からの評価を直接PWR管理指針に照らし当社でチェックすることとした。

・設備改造に伴う2次系配管の変更が、確実に2次系配管肉厚管理業務に反映されるよう、仕組みを変更した。すなわち、改造を行うメーカ等がスケルトン図を変更し、当社に提出することを工事仕様書で要求する。当社はこれらのスケルトン図原本を管理するとともに協力会社にNIPSによるスケルトン図の変更を依頼し、管理票に反映させる。さらに、当社社員が点検箇所に抜けがないかについて定期的なレビューを行うこととした。

 (b)2次系配管肉厚調査工事の当社現場立会い等の強化(9月24日決定)

 協力会社社員が現場で行う肉厚測定作業等への当社社員の立会いを強化し、協力会社社員との対話、連携、及び重要ポイントの確認を行うこととした。

 現在行っている大飯4号機の定期検査以降は、2次系配管肉厚管理業務に携わる人員を強化し、配管肉厚調査工事における立会い頻度及び立会いポイントの見直し、さらには、測定実施からデータ入力、評価等の一連の工程にわたって確認を行うなど2次系配管肉厚管理業務を充実させる。

b.2次系配管肉厚管理における外注管理の抜本的見直し

 今回の事故に鑑み、肉厚測定を除く2次系配管肉厚管理業務は当社が自ら全て実施することとし、必要なシステムを含め、協力会社から当社に移管する(2004年末目途)。

 そのため、業務分担を以下のとおり見直しする。

 (a)当社が行う業務は肉厚測定を除く、以下のすべての業務とする。

・PWR管理指針に基く余寿命評価、点検計画の作成

・点検結果の評価、対策の立案、実施

・スケルトン図、管理票の変更及び原本管理

・定期的な管理票のレビュー

 (b)協力会社が行う業務は、肉厚測定のみとする。

(4)2次系配管肉厚管理の強化

a.肉厚管理が必要な配管への表示札取り付け(9月24日決定)

 弁、ポンプ等は機器番号により識別できるが、配管の肉厚管理が必要な箇所については識別困難である。このため、主復水・主給水系統の主要点検部位について点検状況等を記載した表示札を各プラントの今後の定期検査において順次取り付けることとした。

 この際、表示札には、当社の管理責任者や次回点検時期等を明記することで自分の担当設備であるとの意識を醸成し、自ら確実に管理するとともに、近傍で作業する他の作業者にも管理状況を容易に確認できるようにする。

 なお、上記以外の部位への表示札の取り付けは、本対策の効果を確認の上、展開を図ることとする。

b.技術基準適合性判断の厳正化

 当社が行ってきた肉厚管理において、一部、技術基準解釈の「ただし書」の不適切な適用があった。これを改め、技術基準の適用を厳正に行い、技術基準の解釈に明記されている規定値を用いて運用することとし、実施している(9月5日決定)。

c.教育の充実

 当社が自ら業務を実施するにあたり、体系的に2次系配管肉厚管理の重要性を含む教育を実施する。

(5)NIPSの改善及び高度化

 NIPSの2次系配管肉厚管理のシステムを当社に移管することに加え、人的ミス防止の観点から以下の対策を実施する。

・スケルトン図と管理票をNIPSの2次系配管肉厚管理システム内でリンクさせる。

・スケルトン図、管理票の変更経緯をシステムに記録し、トレーサビリティーを向上させる。

・主要点検部位の新たな追加等、重要な変更がシステムに入力された場合、当該箇所が明確に認識できるようビジュアル化(赤色表示等)を図るとともに、関係者にその変更を通知するなど改善する。

(6)定期検査における現場作業等の監督業務の直営化

 当社社員の保全業務能力をより強化するため、定期検査における現場作業等の監督業務を専門的に行うグループを設置することを検討し、今年中目途に具体化させる。

(7)水平展開の実施

各発電所での肉厚管理における課題について他の発電所においても共有できるよう水平展開の仕組みを構築するとともに、電力間での水平展開を図る。

・今回の点検リスト漏れのような事例が発電所で発生した場合、不適合事例に具体的な内容を示す例示もあわせて報告され、他の発電所で水平展開が図れる仕組みを構築することを決定した(9月21日決定)。

・さらに、今回発生した点検リスト漏れのような事例を国内電力会社間で共有するために、国内電力会社間で水平展開が図られるよう仕組みを改善する(10月末目途)。

(8)当社と協力会社との情報共有化

 従来から安全衛生協議会等の活動や協力会社が行う朝礼、TBM等への参加などにより協力会社との交流を深めてきているが、更なる双方向の情報受け渡しを行い、情報交換の維持向上を図ることとする。

   (略)

 また、対話活動の内容については、3か月に1回程度の頻度で集約し、発電所長以下で対応について検討することとする(9月24日決定)。

(9)地元との対話活動の充実

 従来、発電所のコミュニケーショングループを中心に、さまざまな機会を捉えて地元の方々との対話活動等を進めてきたが、地元の方々が発電所に向けるお気持ちを発電所の技術者等も直接汲み取り、発電所を運営することが重要である。こうした観点から、地元の方々と発電所の技術者等も直接対話する機会を増やすこと等改善を図る(10月から開始)。

 また、社長以下、本店・支社幹部が地元の方々と直接対話し、その声を経営に活かしていくことが重要である。したがって、今後、当社幹部が直接地元の方々のご意見を聞かせていただく、あるいは当社の状況等を定期的にご説明する機会を設けることとした。

   (略)


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