[原子力産業新聞] 2004年10月21日 第2256号 <1面>

[保安院] アクシデントマネジメント PSAで有効性を確認

 原子力安全・保安院は18日、各電気事業者が今年3月に提出した全原子炉のアクシデントマネジメント(AM)整備後の確立論的安全評価(PSA)について、同院の評価結果を発表した。各炉とも2002年度に実施した代表炉のPSA結果と同様、AM整備により安全性の向上を確認。代表炉の炉心損傷頻度と有意な差がある炉では、系統構成など明確な要因も分析し、事業者評価を妥当とした。

 AMは、原子力発電所が設計基準事象を超えた場合でも、過酷事象(シビアアクシデント)への拡大を防止する運転管理方法や設備の整備。電気事業者はすでに02年度までに全52基のAM整備を完了、保安院は整備結果を評価した。同時に各炉型を代表する13基はPSAも実施。AM整備により炉心損傷頻度の一桁近い低減を確認した。

 今回の評価は、代表炉以外の39基のPSA報告を受け、炉心損傷頻度に着目して代表炉と比較するとともに、PSA結果に有意な差がある場合、その要因を分析。さらにこの差の定量的評価のため、原子力安全基盤機構が代表炉のモデル変更を行い、感度解析を実施、炉心損傷頻度の相違を合理的に説明した。

 BWRで有意な差があると考えられ分析したのは福島第一5号炉(AM前2.4×10のマイナス7乗/炉年)、柏崎刈羽2号炉、浜岡3号炉など。福島第一5号炉は低圧系注入弁の炉圧低下開許可信号の構成機器が少ないことにより、柏崎刈羽2号炉は非常用炉心冷却系(ECCS)サポートの中間ループの冗長化により、浜岡3号炉は補機冷却系の常時運転により、それぞれ炉心損傷頻度が低い値となっている。

 同じくPWRでは泊1・2号炉が再循環切替操作の自動切替設計により、美浜1号炉は再循環サンプの第二隔離弁の常時開運用により、伊方3号炉は高圧注入ポンプ運転時の低圧注入系のブースティング不要により同頻度が低く、敦賀2号炉はこれが必要で高い。

 保安院では、シビアアクシデントは世界的に研究中で、今後有用な知見が得られた場合、AMに反映させることが重要としている。


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