[原子力産業新聞] 2004年11月25日 第2261号 <3面>

[ロシア] 原子力船技術を応用し 艀上に小型原子力発電所

 原子力砕氷船の建造・運転での豊富な経験を持つロシアは、この技術を応用し、艀の上に小型原子炉を設置して需要地まで曳航、電気と熱を供給するシステムの開発に取り組んでいる。ノーボスチ通信社の宇宙研究所専門家Y・ザイツェフ氏の解説を紹介する。

【ロシア・ノーボスチ通信社】ロシアは、民間用として原子力船隊を持っている世界で唯一の国だ。原子炉を備えた砕氷船は、北極地方で40年以上順調に働いている。

 原子力砕氷船「レーニン」号の最初の原子炉プロジェクトは1954〜1955年に開発され、1959年に原子力船舶が稼働した。1975年から1992年には、さらに7隻の原子力砕氷船、艀輸送船とコンテナー輸送船が建設された。現在は、新たな主要船隊となる砕氷船「勝利五十年」号が建設中だ。また原子力砕氷船用の新世代原子炉のプロジェクトも開発中で、2015年以後に現在の船隊に取って替わることになる。

 ロシアでは、全部で数百基の船舶用原子炉が製造され、稼働してきた。長年の稼働実績は高い信頼性と寿命を証明している。とくに設計外の外部影響を伴う事故の際の原子炉の信頼性と強靭性は特筆できる。

 ロシアの船型(浮揚型)原子炉技術は世界レベルに達しており、製造者は、小規模原子力発電所の分野で、今まで蓄積してきた独自の技術力を存分に活用するよう努めている。ロシアでは、このような発電所は、北方極地や極東地域で特に多く稼働している。このような地域では、大型原子力発電所の導入は、高い建設コストや長い建設期間のため、受け入れられない。

 原子炉開発は、ロシアの原子力研究者と造船業者との共同で進められ、電気と熱を商業ベースで発電する船型原子炉システムを実際に製造できる可能性を示した。このシステムは、船にも搭載できるし、陸上設置も可能になるものだ。これまでのプロジェク経験より、このシステムは、3年間程度の比較的短期間で建設でき、ロシア企業が今後4〜5年以内に製造可能だ。

 浮揚型システムは、自力では動けないバージ船や船橋に、原子力蒸気供給システムや蒸気タービンを設置すれば、電気がなくともあらゆるところで稼働することが可能だ。また現在、セヴェルドビンスク氏(アルハンゲリスク州)に、このような浮揚型システムを使った最先端の発電所プロジェクトを設計中だ。このプロジェクトは、「2002年〜2005年、さらに2010年までを見据えた有効エネルギー経済」と称するロシア連邦の特別計画にも入っている。この発電所の建設と各地への設置に対しては、連邦原子力監視局の許可も取得した。

 海水淡水化の目的でも浮揚型小規模発電所の建設は関心を呼び、多くの開発途上国が関心を示している。国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は、中小規模の革新的原子炉の開発は、ユーザーの需要と原子力技術導入という二つの問題を融合・解決するさい、根幹的な役割を果たすことになるとの見方を持っている。

 ロシアの専門家が提案する技術には優越点が多くあり、大型バージ船製造に必要な船舶建造能力と、発展したエネルギー機械製造技術がある国が、浮揚型原子力発電所を建設する意向を示した場合、ロシアはそのプロジェクトに参加し、協力できる可能性が十分にある。この場合、原子力技術の管理は、原子炉装置の供給国となるロシアが行なうことになる。また、このような原子力発電所の大量な建設と稼働には、世界の広範な国が参加する国際企業連合を組織して行うことが予想される。

 ロシアが原子力船で蓄積した経験と稼働実績により、浮揚型原子炉システムの稼働への技術サービス・コストを減らし、輸出先の労働力レベルがあまり高くなくとも、開発途上国にとって取組み易いプロジェクトとなる。


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