[原子力産業新聞] 2004年12月9日 第2263号 <1面>

[原子力安全委員会分科会] 「耐震性比較は不適切」と説明

原子力安全委員会・原子力安全基準・指針専門部会の耐震指針検討分科会は11月30日、第13回会合を開催した。

11月22日付の毎日新聞が、国内の3か所の原子力発電所で比較した場合、地震による炉心損傷確率に1000倍の差があり、最も高い炉は40年間で2%程度に達することが原子力安全基盤機構の試算で明らかになったと報じたことについて、平野委員は、試算で使われた発電所設計データが、標準的な原子力発電所の公開データであり、「個別プラントのデータではない」と報告。試算結果はモデルプラントの値であり、実機における実際の耐震安全性を示すものではないと強調した。

同委員によると、これは、原子力安全・保安院の委託事業として、原子力発電技術機構(当時)が、確率論的手法を用いて、原子力発電所の耐震設計に必要な地震動データの作成手法を開発するため、3つのモデルケースを想定して試算、03年9月に報告書に取りまとめたもの。

同委員によると、試算に必要な地震動関連データは、3サイトの特徴を踏まえたものだったが、発電所の設計データは、個別プラントのデータではなく、標準的な原子力発電所の公開データを用いた。このため、報告書には、3つのサイト名は記載されておらず、試算結果によって、個別の発電所での実際の耐震安全性や、国際原子力機関(IAEA)の耐震基準との整合性を議論することは適切でないと述べた。

原子力安全基盤機構は、「確率論的手法を用いた設計用地震動の作成手法の開発のために、モデルプラントについて試算したものであり、個別地点の耐震安全性の評価を目的にしたものではない」とし、電力会社の試算結果と比較して議論することは適当ではないとしている。

確率論的耐震安全性評価の手法は、日本では統一的な考え方が定まっておらず、基盤機構は、「この手法の活用は時期尚早であり、中期的な課題」としている。これについて現在、日本原子力学会が統一的な考え方を調査・検討中だ。


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