[原子力産業新聞] 2004年12月16日 第2264号 <3面>

[レポート]アジア原子力協力に新たな勢い 原子力委員 町 末男

12月1日、ベトナムのハノイ市で、日本が主導する「アジア原子力協力フォーラム(FNCA)」の第5回大臣級会合が、日本とベトナムの両原子力委員会の共催で開かれた。日本の棚橋科学技術政策担当大臣、ベトナム、フィリピン、インドネシアからそれぞれ科学技術大臣、中国は国家原子能機構主任、マレーシアは科学技術革新副大臣、オーストラリアの原子力科学技術機構理事長、韓国から科学技術省原子力局長、タイ科学技術省事務次官補が出席した。

棚橋大臣は「世界の中で最も経済発展が順調な地域の1つであるアジア諸国が集まり、原子力利用・科学に関わる協力と政策を語り合うことに大きな意味がある」とFNCAの意義を述べている。

原子力エネルギー利用の急速な展開

中国の張華祝主任は急速な経済成長を支えるための国家エネルギー開発計画の中で、2020年までに原子力発電を3600万kW(総電力の約4%)にすることが決められ、現在の5倍になると述べた。一方、韓国は「APR―1400は来年着工、2011年運転開始」と技術の進展に自信を示した。ベトナムの原子力発電計画はいま重要な時期にきている。ハイ工業大臣は「年率8%の経済成長を支えるためには原子力発電導入は不可欠、プレFSの結果は近く国会に提出されるであろう」と述べている。

インドネシアのカディマン研究技術担当大臣は、原子力発電は2004年から2020年までのエネルギー政策の中でエネルギー源の1つとして明確に位置づけられていると述べている。

このような各国の原子力発電に対する関心の高さを踏まえて、FNCAは日本の主導で「アジアの持続的発展における原子力エネルギーの役割」パネルを2004年に開始、結果を今回の大臣級会合で報告した。

「人材育成が大きな課題」―アジア原子力大学―

ベトナムの「アジア原子力大学」構想提案を中心にこの問題が討議された。

人材育成は1か国でやるよりも、各国で分担してネットワークを組んでやった方が良い。そのような仕組みをFNCAで作れないかという提案である。議論の結果、主に以下の点が合意された。

@各国に於ける人材のニーズ(分野、人数、時期など)を把握することA各国が提供できる研究機関、大学と分野を明確にすることBIAEAが提案中のANENTとの連携を検討し、重複を避けることC各国のハイレベル行政官と専門家の会合で検討すること。

また、日本の「原子力研究交流制度」はアジアの人材育成に貢献してきたと高く評価されている。

「評価されるFNCAの成果」―どう役立てるかが課題―

研究炉・放射線利用、安全文化、廃棄物管理などのプロジェクトで目に見える成果が得られており、高い評価が与えられた。今後の課題は、これを社会、経済的効果に結びつけていくことである。例えば、核医学に不可欠なTc−99mのジェネレーターのより経済的な新製造法の開発に成功したが、この成果を商業的な生産に結実させることが次のステップで、各国の努力が期待される。

「FNCAの未来」を討議

著者から以下の論点を提示した。討議の結果、ほとんどの国がこれらの点の重要性に賛成した。

▽FNCA活動の将来方向

@FNCA各国の必要性及び関心に見合った活動が必要A活動の成果が効果的に活用されることBプロジェクトのホスト国の拡大Cプロジェクトが効果的に展開されるよう各国での支援体制を充実D「持続的な発展のための原子力の役割」パネルは重要。

▽政策討議の重要性

@各国の共通課題についての大臣レベルでの協議の重要性を確認Aパネルによる討議により大臣レベルの協議の実効性をあげることB課題として、「人材問題」、「安全問題」、「持続的発展」などを検討。

むすび

2005年で5年間となるFNCAの各プロジェクトは適切な評価を行う時期となる。これを契機に各国のニーズにより適切に応えた新プロジェクトの提案も必要である。

今回の大臣級会合では各国代表から率直で積極的な見解が表明された。今後、各国のより大きな貢献が期待されるところであるが、主導国である日本が任された宿題も多い。


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