[原子力産業新聞] 2005年1月5日 第2265号 <4面>

[年頭所感] 京都議定書発効へ取組み強化 経済産業大臣 中川昭一

新年おめでとうございます。

 科学技術は、我が国が、知の創造と活用によって世界に貢献し、また、国際競争力のある持続的発展を図り、さらには、安心・安全で質の高い生活を実現するために不可欠なものです。特に、本年は、第二期科学技術基本計画の最終年度に入ると同時に、次期科学技術基本計画の方向性を決定する重要な年です。

 世界最高水準の「科学技術創造立国」を目指して、戦略的・総合的に科学技術政策を推進してまいります。

 科学技術の中でも、原子力は環境保全と経済発展を両立させるエネルギー源として不可欠であると共に、放射線の利用による医療の進歩や農業など産業の発展にも資する重要な役割を担っています。

 資源に乏しい我が国においては、エネルギーの安定供給の確保と二酸化炭素排出量の削減に寄与する原子力発電を基幹電源と位置づけており、使用済燃料を再処理して回収されるプルトニウム等を有効利用する「核燃料サイクル」の確立を原子力政策の基本として、その実現に向け最大限努力してまいります。

 原子力の利用にあたっては、安全の確保が大前提ですが、昨今の原子力関係の事故・トラブル等により、原子力に対する国民の皆様の信頼が損なわれたことは誠に遺憾です。国民の信頼回復に向けて、原子力安全委員会の独立的・専門的な機能を最大限に活かすなど、今後の原子力利用のため、原子力の安全確保に万全を期してまいります。

 原子力政策を着実に推進していくためには、原子力を推進する国及び事業者と立地地域の住民をはじめとする国民の皆様や地方自治体との相互理解を深めていくことが必要です。

 原子力委員会においても、国内各地で「市民参加懇談会」、「ご意見を聴く会」を開催するなど、原子力政策の策定プロセスにおける市民参加の拡大、原子力政策に対する国民の皆様との信頼関係の確立に努めており、今後とも、原子力に対する国民の皆様との相互理解の一層の促進と信頼回復が達成されるよう全力を尽くしてまいります。

 原子力政策の基本方針を示す「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」については、原子力委員会において技術の進展、情勢の変化等を適切に反映させるための評価を進め、新計画の策定に向けた審議が昨年6月より行われております。本審議においては、検討すべき項目のうち、まず核燃料サイクル政策について、様々な観点から総合的な評価を実施し、昨年11月に再処理路線を基本方針とする中間とりまとめが行われました。

 今後も、原子力科学技術、放射線利用、国際社会と原子力の調和等の課題について幅広い検討を行い、更に、パブリックコメント等により国民各層の意見も聴きつつ、本年内の策定にむけて、引き続き十分に議論が尽くされることを期待しています。

 日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の原子力二法人は、本年10月に独立行政法人日本原子力研究開発機構として統合される予定です。

 本法人は、我が国唯一の総合的かつ先端的な原子力の研究開発機関となることから、基礎・基盤研究からプロジェクト研究に至る幅広い研究開発事業の一元化により、人材の交流や成果の相互活用など分野間の連携・融合等に大きな効果を発揮し、原子力研究開発利用の促進により一層寄与していくことを期待しています。

 また、原子力分野での国際協力では、アジアとの関係を重視しています。このため、我が国が主導しているアジア原子力フォーラム(FNCA)の開催等を通じ、アジア諸国における放射線利用や原子力エネルギーの開発利用を円滑に進めていくべく、引き続き意見交換や技術開発協力を進めてまいります。

 年頭にあたり、皆様の変わらぬ御理解と御協力をお願いいたしますとともに、日本の原子力の発展を担う皆様の一層のご活躍を期待し、一層の御多幸をお祈りいたしまして新年のご挨拶といたします。


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