[原子力産業新聞] 2005年1月27日 第2268号 <4面>

[原産・基盤強化委員会] 続・フランスの原子力人材養成

人材育成(フラマトム本社)

12月9日 午前

フラマトムANP社の人材確保と育成の課題は、これからの原子力発電所建設と国際企業化に、いかに適応するかである。

フランスの原子力産業は状態が良いイメージが強いのだが、IT産業、第3次産業なども人気があるため、優秀な学生は各産業で奪い合いという状況。雇用政策では、分野も国籍も広く採用しようとしていた。環境保全も含めた倫理観が不可欠であるとし、原子力スポークスマン養成の研修も実施している。良い学生を確保するために学生向けの研修制度も作っていた。

フランスでは、法律によって、企業が従業員教育に給与の1・5%以上を使うことが義務付けられていることもわかった。

EDF本部(パリ)

12月9日午後

対応者=C・メザ氏(人事・スタッフ関係部門長)

EDFは1946年約1000社が統合された公社で、2004年8月、株式会社になった。原子力の教育システムは高度な安全、品質が求められ特別な人材養成予算がつけられており、発電所員の保修関係の研修時間が約100時間、運転員は210時間にも及ぶが、民営化に伴い教育部門にもコスト削減が迫られている。19の各発電所にはフルスケール・シミュレーターがあり、メンテナンス訓練用には、ブジェーの研修センターやシャロンのCETICがある。経験者が引退していることから、建設能力を開発することや技術伝承が課題であり、ロシア、南アフリカ、中国の技術支援を行いながら技術を蓄積し、フラマンビルでのEPR建設に備えるという戦略で臨んでいる。

国立原子力科学技術高等学院と欧州原子力技術ネットワーク

国立原子力科学技術高等学院(INSTN、パリ郊外サクレー)

12月10日午前

対応者=J.サフィー教授(ENEN事務局長兼務)

INSTNはフランス原子力庁(CEA)に属する。1956年に、フランスにおける原子力分野の唯1の学校として設立された。学生は、@既に社会に出ているエンジニアA専門過程を勉強するエンジニア志望の大学生B医者で放射線を専門とする人C薬剤師――などである。

2003年の学生数は約700名おり、CEAなどの技術者の兼務も含め生徒より多い教師がいる。専門教育の生涯学習は647講座あり、受講生は年7千8百人に上っている。

INSTNの施設は、サクレー、カダラッシュ、シェルブール、グルノーブル、マルクールの5箇所にあり、1500人のスタッフを擁する。在学中にインターンシップ(職場実習)で企業に行く機会があり、就職先としてはCEA、EDF、AREVA等。INSTNの当面の課題は、80%濃縮ウランを使用している原子炉があり、誰でも近づけるINSTNでは問題なので閉鎖する必要があるということ。

欧州原子力技術ネットワーク(ENEN、INSTN内)

12月10日午前

対応者=ジョセフ・サフィー教授◇

ENENプロジェクトのきっかけは、原子力を希望する学生数が減少していること、原子力のスペシャリストが定年を迎えること、何もしないとノウハウが失われてしまうことなどであった。目的は、@欧州共通の学位(European Master of Science, Nuclear Engineering)を出すことA原子力工学に向かう学生を増やすことB研究機関、産業界及び行政機関との関係を強化することC職業人の研修プログラムを原子力産業に提供することD学生や教授陣両方の大学間交流を強化すること――である。

EU統合を機にヨーロッパでは企業合併が進み、これに促されて教育界もネットワークをつくり教育インフラを共用しようという機運が高まっている。ENENは、2003年12月に非営利団体として本部がINSTNに置かれた。現在EU各国の大学30校がメンバーであり、各国間の教育体制などの調和をとるためネットワーク活動の中心は、各大学である。

産業界は静観している状況であり、大学を軽視すれば、中性子物理学などの専門家不足が原子炉施設の安全性に重大な影響を及ぼすと懸念している。インターネットは連絡に利用されているが、ウェブサイトは初期的な段階であり、3月の次期総会ではウェブサイトを議題の1つとしており、注目していきたい。


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