[原子力産業新聞] 2005年2月3日 第2269号 <2面>

[原研・高エネルギー加速器研究機構] J−PARC建設の状況を公開

日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構は26日、原研東海研究所に建設中の大強度陽子加速器施設(J―PARC)の建設状況を報道関係者に公開した(=写真)。同施設は2008年春の稼働開始を目指すが、永宮正治・J−PARCプロジェクトディレクターは「技術面に遅れはなくすでに全設備の約80%の発注を終えた。予算面も05年度分はクリア、今後予断を許さない面もあるが、08年春の稼働開始は十分可能」との見通しを示した。

J−PARCは当初、07年春の稼働開始を目指したが、第1期工事に必要な予算が1500億円と巨額なため、建設が6年計画から7年計画に変更された。しかし中性子やニュートリノなど2次粒子ビーム利用研究の国際競争は激しく、関係者は特に米国がオークリッジ研究所に建設を進めているSNSとの競合を意識する。SNSが06年稼働開始予定のため、これ以上遅れるとJ−PARCに大きな求心力が期待できなくなるとの危機感だ。

国際競争激化のなかJ―PARCも建屋、機器の建設・製作ともピークを迎えている。すでにリニアックと3GeVシンクロトロンでは加速器を設置する地下トンネルや地上建屋がほぼ完成。リニアック本体は今年4月から、3GeVシンクロトロン本体も今年8月頃から、それぞれ搬入を開始する。

50GeVシンクロトロンでは周長約1600mの地下トンネル工事が最終段階に入り、物質・生命科学実験施設の建設も急ピッチで進んでいる。同施設には中性子源となる水銀ターゲットを収納するアウターライナーをすでに設置しており、これを覆うように建屋の建設が進行中。直径約10m、高さ約7m、重量約65トンの同ライナーは建屋建設後の設置が困難なため、建設前に設置した。併せて原子核素粒子実験施設も順調に進む。

世界唯一のK中間子ビーム、世界最大のニュートリノビーム、世界最高レベルのパルス中性子ビームなどを持つJ―PARCの第一期工事完成まであと3年だが、今後の課題として両機関はリニアックのエネルギー回復、建設資金の確保、完成後の運営体制、ビーム料金課金、維持費の創出などをあげる。リニアックは経費増を抑えるため当初予定の400MeVから200MeVに抑えているもので、運転開始後に3年程度かけて400MeVにする。運営体制は現在、両機関と文部科学省で協議中。消費電力16万kWのため電力料金だけで年間数十億円、維持費の創出やビーム料金を検討する上でも求心力が重要になる。


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