[原子力産業新聞] 2005年2月10日 第2270号 <2面>

[伊政府] 伊首相が見直し発言

チェルノブイリ事故後の1987年に、国民投票で原子力からの撤退を決め、3基・132万kWの原子力発電所を閉鎖したイタリアで、ベルルスコーニ首相が、「原子力を見直すべきだ」との発言を行い、注目を集めている。

ベルルスコーニ首相は1月20日、スイスとイタリアを結ぶ長さ46キロメートルの38万ボルト新送電線の完成式典に出席、2003年9月にイタリア全土で発生した大停電の教訓に言及し、「包括的なエネルギーシステムの再検討が必要」としたあとで、「イタリアは原子力発電に対する姿勢を再考する必要がある」と述べたもの。

イタリアでは、国内の電力需要に対して発電容量が不足していることから、フランス、スイスなど周辺国から大量に電力を輸入している。2003年の大停電も、嵐で倒れた樹木がスイスとイタリアを結ぶ送電網を切断したことがきっかけとして発生した。

同首相はまた、国外への電力依存のため、イタリアの電力は国外に比べて「20〜30%割高」で、イタリアの産業界と家庭は割高な電力料金を払っていると指摘、「電力、ガス、メタン、石油、原子力」を含めた、包括的なエネルギーシステムの再検討が必要だと述べた。

イタリアは欧州平均を上回るエネルギーの85%を輸入、電力についても周辺国の原子力発電所からの電力を輸入している。同首相は、「これらの国で何か事故があれば、その損害はイタリアにすぐに届く」と述べ、イタリアが周辺国からの原子力事故リスクにさらされる一方、割高な電力購入を余儀なくされるという「2重の犠牲」を払っているとし、「解決策を見いださなければならない」と述べた。

このため、「政府は新たなエネルギー計画を作成中」とした。

ベルルスコーニ首相のこの発言に対して、緑の党などは「政府は再生可能エネルギーに投資すべきだ」と反発するが、A・ウルゾ産業副大臣は、「イデオロギーを廃した議論が必要」と指摘。ベルルスコーニ氏が党首を務める「フォルツァ・イタリア」党のI・ベルトリーニ氏は、「20年も前に行われた国民投票にとらわれるのは、時計を逆回しするものだ」と、最近20年間の原子力技術の進歩を強調。同党環境政策担当のF・ストラデラ氏も、「原子力の状況を再評価することは有益」と評価している。


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