[原子力産業新聞] 2005年3月17日 第2275号 <1面>

[IAEA、経産省、文科省共催] 福井で原子力セミナー開く

 国際原子力機関(IAEA)、経済産業省、文部科学省は9日、10日の両日、福井市の福井県国際交流会館でセミナー「原子力への期待−地域との共存・共栄の視点から考える」を開催した。

 今回セミナーは、原子力平和利用の推進のためには地域社会の住民の理解が重要な要件であり、高速増殖原型炉「もんじゅ」をはじめ多数の原子力発電所が立地し、福井県が「エネルギー研究開発拠点化構想」に取り組んでいることなどを背景として同地で開催された。

 W・ブルカルトIAEA事務次長、保坂三蔵経済産業副大臣、小泉顕雄文部科学大臣政務官による開会挨拶に続き、プロローグセッション(=写真)では、「これからの原子力」をテーマとして、木元教子原子力委員を進行役として、西川一誠福井県知事、近藤駿介原子力委員長が原子力利用に対する期待、原子力の安全確保などについて議論を展開した。

 西川知事は、原子力発電所の立地により国の施策に協力、貢献してきたとの認識を示し、社会資本の充実、雇用等の面でメリットを享受したと政策を評価、今後も安全第一、コンセンサス、地域振興を三大柱として、原子力利用に取り組むとの考えを述べた。

 近藤委員長は、「原子力は絶対安全ではなく、リスクが伴う。浄水場の水でも、ガンの発生確率は十万分の一程度はある」と述べ、リスクの度合いを予測する方法論が必要、そしてどのように決定するかが重要であるとした。

 木元委員の「原子力は迷惑施設ではなく、地域の資源、資産である」との指摘を受けて、西川知事は関電原子力事業本部やサイクル機構の本社機能の一部が県内へ移ることを歓迎、評価するとともに、「エネルギー研究開発拠点化」への期待、意気込みを語った。

 最後に、21世紀の原子力への期待について、近藤委員長が「基本は経済性のみならず、環境、循環型社会、セキュリティなどの視点が重要。原子力を長く使うことが国益となる」と結んだ。

 このほかセミナーでは、国内、国際機関、諸外国の関係者が参加し、「原子力の現状と将来展望」、「暮らしの中の原子力利用」などの四つのセッションを開催し、約330名が参加した。


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