[原子力産業新聞] 2005年3月17日 第2275号 <4面>

[原研] 加速器核変換システムで報告会

日本原子力研究所はこのほど第二回「加速器駆動核変換システム(ADS)の技術開発」成果報告会を開催した。廃棄物処理の負担軽減(=図)を目的とするADSは、今年から欧州が14か国連携で包括的研究を開始。国内では13機関が公募型研究を進めるとともに、J−PARC実験施設の建設が注目される。

今報告会では原研の大井川宏之・核変換利用開発グル−プリ−ダ−がADSの導入戦略と最近の動向について、公募型事業に参加する研究機関、企業、大学などの各機関が加速器、未臨界炉、鉛ビスマスなど各要素技術の開発状況について報告した。

ADSの動向の中で注目されるのは欧州の「EUROTRANS」。今年から14か国・45機関が連携し、核変換の実証までを視野に入れた実験炉級ADS「XT−ADS」(熱出力百MW以下)や商業プラント規模の核変換を行う「GenericETD」(熱出力数百MW)の設計研究とともに燃料、鉛ビスマス核破砕タ−ゲット、加速器・研究炉の結合実験、核データの整備など幅広い開発に着手する。米国は先進燃料サイクル計画(AFCI)の一環として大学を中心に研究炉と加速器の結合実験を計画。韓国も「HYPER」と呼ばれる設計研究を行い、鉛ビスマスの実験も開始している。

国内では原研を中心に、公募型事業とJ−P0ARCの2つのアプローチで開発が進む。2040年頃に必要になる第2再処理工場では、高レベル放射性廃棄物処分の負担軽減から、分離変換技術の導入が想定され、同工場から出るマイナーアクチノイドの2050年頃からの本格的な核変換を目指す。

公募型事業には原研を含めて13機関が参加し、これまでに熱出力8百MWのADSの概念を構築するとともに未臨界炉設計に関するデータを蓄積してきた。同事業は02年度に文科省の革新的原子力システム技術開発のテーマに採択され、3か年計画で加速器、ターゲット・冷却材、未臨界炉などの技術開発を進めてきたが、来年度以降も産官学連携による技術開発を進める方針。加速器のコスト低減や信頼性向上、ビーム窓材料、安全性検討、加速器と未臨界炉の接続などの技術開発を検討している。

J−PARCの第2期計画の核変換実験施設は08年頃に建設に着手、13年頃にADSの原理検証と材料照射データの蓄積を開始し、15年頃に実験炉級ADS建設着手の判断を行うが、関係者は早期着工に期待する。


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