[原子力産業新聞] 2005年3月24日 第2276号 <2面>

[「連携大学院」ネットワーク] 福井大で講演会開く

原子力教育基盤の脆弱化と国立大学独立法人化という流れの中で、大学と研究開発機関等が相互の人材や施設を研究・教育に活用し合う「連携大学院」制度の導入が活発になっている。

核燃料サイクル開発機構は17日、同機構が連携している福井大学、東京工業大学、金沢大学と共同で連携大学院ネットワークの構築を目指した特別講演会「核燃料サイクル技術開発の魅力とは」を福井大学で開催した。

原子力関係では日本原子力研究所が平成7年度から始めており、すでに9大学と連携しているが、サイクル機構は、14年度から金沢大(地質環境科学)、15年度は東工大(バックエンド工学)、16年度には大学院に原子力専攻課程を新設した福井大(安全工学)と連携協力をスタートさせている。

今回の講演会は、人材育成に関する実態や成果、共通課題等を4者間でネットワーク化し、より効果的な教育のあり方を探っていこうという目的で初めて開かれたもの。教育関係者や学生らが参加した。

冒頭挨拶した児嶋眞平・福井大学長は、我が国での核燃料サイクル確立の重要性を強調。とくに新原子力長期計画策定会議においてサイクル路線が再確認されたこと、「もんじゅ」の改造工事が始められたことについて評価するとともに、「FBR実用化までが勝負の時期だ」として、この連携ネット構想が推進されるよう期待すると語った。

続いて、福井大と連携している原子力安全システム研究所・技術システム研究所長の木村逸郎京大名誉教授は、研究機関としても大学と連携することによって研究員の士気があがっていると指摘。また「原子力学」は基礎研究と基礎データの積み重ねが重要だとして、安全工学研究を特徴とする福井大にも照射劣化メカニズム研究に欠かせないアトムプローブ装置のような研究装置の充実を図っていく必要性を強調した。

昨年4月に原子力専攻課程を新設し、サイクル機構と原子力安全システム研と連携している福井大の飯井俊行教授からは、1年間の教育実態や課題等について報告があり、参加者の注目を集めた。

同専攻には社会人も含め31名の院生が在籍。原子力安全工学、原子力発電安全工学、プラントシステム安全工学など4つの講座があり、初年度はそれぞれの講座の受講者が、履修指導の不徹底や内容の重複等でやや少数であったこと、共同研究機能が不充分だったこと等の実態を報告。その反省にたって、履修指導の強化や大学、原安研、サイクル機構の指導内容の明確化、連携機関との相互理解の促進によって共同研究を推進していくことなどを来年度から進めていく考えを示した。

また同氏は、サイエンスをエンジニアリング工学に変えていく講座の開設、魅力的かつ社会にも有用な研究をする場としての定着化を図り、それらの安全工学技術が認知された地場産業へつなげていくなどの抱負を語った。

その他、連携による研究成果が3大学から報告されたが、連携による効果について金沢大の中西孝教授は、@基礎のみでなく実用を念頭に置いた教育、研究ができることA研究開発機関の高先端設備の利用による研究の高度化B研究領域の充実、多様化C社会人の学位取得の障壁の低下――など、連携大学院制度が大きな効果をあげていると強調した。

同連携制度は、それぞれの能力を有効活用できるばかりでなく、社会的・地域的ニーズに則した研究の推進にとっても有用であることが参加者の一致した意見であり、こうした制度はさらに広まっていくことが予想される。


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