[原子力産業新聞] 2005年3月24日 第2276号 <3面>

[レポート] 世界の原子力発電の予測

IAEA敦賀セミナーから @ 

A・マクドナルド氏(IAEA)

本紙先週号で既報のとおり、国際原子力機関(IAEA)は、9日、10日の両日、福井市で経済産業省、文部科学省との共催により、セミナー「原子力への期待―地域との共存・共栄の視点から考える」を開催した。初日午後のセッション1「原子力の現状と将来展望」(=写真下)の講演から、A・マクドナルド国際原子力機関(IAEA)原子力エネルギー局計画渉外責任者、H・カリル米アルゴンヌ国立研究所原子力工学部長、およびK・ダイフク経済協力開発機構・原子力機関(OECD・NEA)渉外・広報担当課長の報告の概要を紹介する。

▽「世界の原子力発電の現状と予測」マクドナルド氏(IAEA)

世界の原子力発電は、1980年代後半から拡大の速度が鈍化したものの、長期的に見れば1960年代から一貫して拡大してきた。原子力発電の稼働率も、90年の71%程度から02年の84%弱まで、上昇を記録してきた。03年時点では、世界各国の原子力発電シェアは、フランス78%、スウェーデン50%、韓国40%、ドイツ28%、日本25%、米国20%、ロシア17%、中国2%などとなっている。

2004年は、原子力発電にとって順調な年であった。6基の原子力発電所が送電網に接続し、さらに25基の原子炉が建設中であった。また、フィンランドのオルキルオト原子力発電所3号機建設の掘削作業が開始、1991年以来、西欧地域で初めて建設される発電炉である。

中国、インド、ロシアなど数か国で大規模の原子力発電計画が発表されており、その他の国でも政治家やマスメディアから原子力に好意的なコメントが寄せられるようになった。

昨年11月、ロシアが京都議定書を批准、90日後の本年2月16日に同議定書が発効した。京都議定書の発効は、原子力発電の拡大に有利に働くものと見られる。温室効果ガスの発生量はkWh換算で、大きい順に亜炭・褐炭、石炭、石油、天然ガス、太陽電池、水力、バイオマス、風力、原子力発電となる。

原子力の将来見通しについては、エネルギー需要が急速に拡大し、代替資源がほとんどなく、安定したエネルギー供給が最優先である場合、あるいは大気汚染や温室効果ガスを削減する上で原子力発電が重要な役割を果たす場合、新しい原子力発電所は非常に魅力のあるものだ。特に、このような必要性が最も差し迫っている極東および南アジア地域を中心に、原子力発電が拡大すると予想される。しかも、原子力発電を緊急に必要とする地域は拡大しつつあると思われる。

原子力発電の拡大ペースは、政府の管理下にない市場要因、たとえば天然ガス価格の上昇予測などによっても異なり、また長期エネルギー政策等、政府の政策によっても異なる。さらには、原子力発電の建設コストを抑え、運転成績を向上させる原子力産業界の継続的な努力によっても左右されるだろう。


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