[原子力産業新聞] 2005年4月14日 第2279号 <3面>

[全米科学アカデミー] 使用済み燃料プール 安全性とセキュリティで報告書

 全米科学アカデミー(NAS)は6日、米国の原子力発電所の使用済み燃料プールの安全性とセキュリティに関する報告書を発表、テロ攻撃によるリスクが残るとして、米原子力規制委員会(NRC)に個別の原子力発電所ごとの調査と対策を求めている。

 「商業用使用済み燃料貯蔵の安全性とセキュリティ(公開版)」と題したこの報告書は、上院エネルギー・水資源小委員会(P・ドメニチ委員長)合同会議の要請に応じて、NASの放射性廃棄物管理委員会(委員長=L・ランゼロッティ・ニュージャージー工科大学教授)が作成したもの。秘密報告書として、議会には昨年7月に報告されたが、機微な情報を削除し、公開版が発表された。同報告書作成費用はNRCと国土安全保障省が負担した。

 NAS報告書は、テロ攻撃によって、使用済み燃料プールの水が完全または部分的に失われたさい、加熱したジルコニウム被覆管が火災を引き起こし、大量の放射性物質を環境中に放出する可能性があるとした。これに対処するため、@崩壊熱を均等化するためにプール中の使用済み燃料の位置の変更A使用済み燃料を冷やす水スプレーシステムの設置――を提言している。ただし、プールが地表以下に設置されている場合や、攻撃から防御されている場合、新たなシステムは必要ないともしている。

 報告書ではテロのリスクを考慮して、使用済み燃料の乾式キャスク貯蔵とプール貯蔵とを比較。使用済み燃料の取り出し直後にはプールでの冷却が必要としながらも、乾式キャスク貯蔵には、@空気の自然循環で冷却する受動的システムであることA使用済み燃料集合体が少数に分けられた状態で堅固な容器に入れられていること――などのメリットがあるとする。

 このことから報告書は、NRCが各発電所ごとに使用済み燃料貯蔵の脆弱性の分析を行うことを勧告。原子力発電所によっては、乾式キャスク貯蔵への移行が賢明なケースもありうるとしながらも、コスト・ベネフィットも十分考慮すべきだと述べている。

 この報告に対し、NRCと原子力産業界は反論。NRCのディアス委員長は、ドメニチ議員への3月14日付け書簡で、「NASの調査は、使用済み燃料貯蔵システムは安全でセキュリティも確保されているという最近のNRC調査の妥当性を支持するもの」と述べた。NEIは、使用済み燃料を長期間隔離するための最善の方法は、深地層処分場への定置だと指摘した。


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