[原子力産業新聞] 2005年4月21日 第2280号 <2面>

[原産] 原産年次大会 柏崎・刈羽からのメッセージ

 初日午後には、プレナリーセッション「柏崎・刈羽からのメッセージ──地域社会と環境・エネルギー・私たちの暮らし」が行われ、市民も含めた地域関係者等を招き、原子力発電と立地地域の関わりについて掘り下げた。第二部では、「原子力発電所のある町で、わたしたちは考える!」と題してパネル討論が行われた。秋庭悦子・NPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長を司会に、地元から歌代勝子・「くらしをみつめる―柏桃の輪」代表、川口寛・柏崎商工会議所議員、新野良子・柏崎刈羽原子力発電所の透明性を確保する地域の会会長、種岡成一・東電労組中央副執行委員長、布施実・柏崎市防災・原子力安全対策課課長の五氏をパネリストに迎えて行われたパネルの概要を紹介する。

【東電のデータ不正問題】

歌代氏 この時、私達は原発と真剣に向き合わなくてはならないと気がついた。原発と共生していくには、自ら情報をキャッチし、正しい知識を身につけることの必要性を感じた。プルサーマルについては、まだ市民のレベルでは禁句の状態にある。電力、市はその必要性を積極的に広く市民に周知し、正しく判断できる材料としての情報や学習する場を提供してほしい。

新野氏 この問題を契機に推進、反対、地域等様々な立場の人による「地域の会」が設立して2年。この間、多くの事象に振り回され、激論を重ねてきた。ただ、不祥事が続き、規制が強まることであまりに窮屈になるのはいかがなものか。

種岡氏 これら不祥事に関し、労組として反省し責任を痛感した。労働組合の活動を見直し、信頼回復に向けた活動を、全職場で今後も絶えることなく取り組んでいく必要がある。

布施氏 新潟県中越地震は、市民の原子力発電所に対する深層心理を見せてくれた。「トラブル隠し」により失われた自治体、事業者、国への信頼がまだ回復していないと言わざるをえない。報道のされ方にも問題がある。毎日のように安全上重要でない事象についても報道されていることも住民の深層心理に不安感を残している原因の一つ。安全上重要であるかどうか解説をつけることが必要だ。

【新潟県中越地震】

布施氏 全市が停電し余震が続く中、発電所だけがこうこうと闇夜に浮かぶ様を見た市民の感慨は複雑だった。対策本部には「余震が続く中で原子力発電所の運転を続けるのか」という電話が鳴り続けた。

秋庭氏 我々消費地の人間は、大震災で停電の中、首都圏に電気を送り続けていた市民の思いにはせることがあっただろうか。

【原子力発電所との共生】

川口氏 商工会議所の立場から、発電所建設による需要が一段落した今、東電等の協力を得て、地元が一緒になり関連する新しいものを創り出せればいい。

布施氏 原子力関連財源は10年経つと落ち込む。しかし、我々は発電所の持つ能力を今後も活用していきたい。そのためにも、発電所と市民が互いに感謝し合うことが大切なのではないか。

川口氏 柏崎市の新規企業に対しては電気料金が約五割引だが、隣の長岡市も同じ制度を受けている。これでは企業を誘致する際も不利であり、何より釈然としないものを感じる。立地地に特化した施策が必要だ。

新野氏 国や事業者は地元と、情熱をもって血の通った交流に努めてほしい。


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