[原子力産業新聞] 2005年4月21日 第2280号 <4面>

[原産] 原子力国際展開への10提言

 本紙4月14日号1面既報のとおり、日本原子力産業会議は、「原子力産業の国際展開に関する提言」をまとめ、11日、原子力委員会・新計画策定会議の国際問題検討WGに報告した。10項目の提言を中心に、その概要を紹介する。

 日本原子力産業会議では、2004年に「2050年の原子力ビジョンとロードマップ」および「向こう十年間に何をすべきか」をまとめた。当会議はこれらを民間原子力産業界の行動指針として、関係各方面との緊密な協力のもとに、実施のための検討や活動を行なっているところである。その中に示す提言の一つである「原子力産業の国際化」においては、「国際展開の位置付け、官民の役割明確化などの体制整備」を挙げており、目前に差し迫った中国での原子力発電所の建設拡大や近隣アジア地域における原子力発電所導入計画の展開、また米国における新規建設計画などを睨んで、喫緊の課題として取り組むこととした。

原子力国際展開に関する基本的課題と提言

 原子力発電は我が国において基幹電源として安定的な供給を期待されており、原子力産業の将来にわたって国際競争力のある産業として健全に発展していくことが重要である。さらに原子力発電プラントの輸出などは単に自国の利益の一方的追求ではなく、安全で安定的な国際社会の構築に我が国が寄与するためにも重要な位置付けにある。

 イラクの核開発発覚などを契機に、国際社会における核拡散への疑惑対応に、保障措置の追加議定書の普遍化、原子力関連資機材・技術の移転に際しての追加議定書の供給条件化、濃縮・再処理に関する資機材・技術の移転の制限など核不拡散体制の強化が図られている。我が国としては、原子力国際展開を平和利用に徹したものにするためにも、@国際的な核不拡散体制を遵守・強化し、A原子力利用に欠かせない高水準の安全文化を近隣アジア地域と共有し、広める役割を果たさなければならない。

 原子力産業の国際展開については、1995年6月に経済産業省総合エネルギー調査会原子力部会から中間報告が出され、我が国と経済的に密接な関係をもっている東アジア地域が原子力発電の推進を計画する中で、我が国がこれまで培ってきた原子力発電のノウハウを積極的に提供していく必要性が示されたが、我が国の長期にわたる大規模な原子力利用の経験を踏まえた、原子力安全に関する知見および技術を近隣アジア地域に移転し、共有化するための協力も貴重な国際貢献である。

 核不拡散を確実に担保しつつ、安全にも十分配慮した原子力の国際展開をいかに実施すべきかとの課題には,国の重要な課題として位置付け、官民一体となって取り組むべきである。

提言1 原子力国際展開に関して、国の政策上の位置付けの明確化

 原子力の国際展開、特に原子力発電プラントの輸出などに当たっては、@国際的な核不拡散体制を遵守・強化しつつ、平和利用の成果を得ること、およびA原子力利用に欠かせない高水準の安全文化を近隣アジア地域と共有し、広めることが、我が国の責務と考えるが故に、国の重要な課題として位置付け、官民一体となって取り組むこと

国際交流と人材育成支援への課題と提言

 現在我が国の国際交流と人材育成支援は、文部科学省が中心に、多くは途上国から我が国に研修、共同研究のために受け入れ、必要に応じて我が国から途上国に人材派遣を行なって進めている。また外務省での国際協力機構(JICA)の集団研修、経済産業省原子力安全・保安院の千人研修など他の省庁にもまたがって草の根的に交流、支援が行なわれている。違った角度からの進め方も原子力の理解を幅広い分野でなされるために好ましいことではあるが、どの国には、どの立場の人材をどのような目的で行なうかなどを俯瞰的に見て木目細かく取り組むには全体を統括してまとめることが効率的である。そのためには、関係機関で効率良く調整が図れる仕組みを作ることが重要である。

提言2 国際交流と人材育成支援には、関係機関で効率良く調整が図れる仕組み作り

 現在幾つかの省庁にまたがって進められている国際交流と人材育成支援については、関係機関で効率良く調整が図れる仕組みを作り、目的を明確化して全体を俯瞰できる集中した取り組みにすること

ファイナンスへの課題と提言

 原子力発電プラントの輸出の場合、莫大な資金が必要なうえに、輸出相手国における制度上のリスク、プロジェクト実施に係わる商業面でのリスク、導入国への輸送時を含めた原子力安全保障に係わるリスク、資金回収が長期にわたるリスクなど、多くのリスクを抱えている。しかしながら、我が国は、現状、原子力発電プラント輸出にあたって、例示したようなリスクを輸出相手国との関係で完全には把握、特定できているわけではない。これらのリスクを迅速に把握、特定したうえ、関係当事者間で適切なリスク・シェアリング、リスク・コントロールなどファイナンス面での適切な対応が必要である。

(中略)

 原子力導入国向けへの我が国からの輸出を確実なものにするためには、例えば、現在ベトナムが発注計画しているフィージビリティスタディ(FS)に関し、政府機関によるFS資金を提供することでFS受注を確実なものにし、FSに続く原子力発電所建設自体の受注を有利に展開するなど、建設準備段階からの対応検討が必要である。

提言3 安全確認に関する経済産業省/ 国際協力銀行(JBIC)/日本貿易保険(NEXI)と輸出者との効率的、迅速な対応 

 JBICの輸出信用ベースのファイナンス付き契約の場合は、ファイナンスクローズが契約発効の絶対条件となるので、その前提条件となる、安全確認→輸出保険付保→輸出許可の一連の手続きを迅速に行なう必要がある。したがって、輸出契約妥結以前から、安全確認の手続きを進める必要があり、手続きを進めるに当たっては、経済産業省/JBIC/NEXIと輸出者は、中国応札時の対応と同様に今後とも緊密な連携のもと効率的、迅速な対応を図ること

提言4 国際協力銀行(JBIC)からの先進国向け融資原則禁止の融資再開への検討

 現実に存在する先進国向けの原子力機材、プラント輸出に対するJBICの融資原則禁止について、融資再開を検討すること

提言5 原子力が国際的な支持を得られるための地道な努力

 気候変動枠組条約第7回締約国会議(COP7)では、「原子力により得られた排出枠を京都議定書に定める排出目標達成のために利用することを差し控えること」とされているが、持続可能な発展のための地球温暖化対策、およびエネルギーの安定供給を両立させるには原子力が最も有効であるため、原子力が国際的な支持を得られるよう地道な努力をすること。さらに、原子力を将来クリーン開発メカニズム(CDM)の対象に持っていくために、京都議定書の第二約束期間に向けて原子力の役割をPRすること

原子力損害賠償制度への課題と提言

 万が一の原子力事故発生への備えとしては、事業者が、自身でまたは、国の補完による十分な損害賠償能力を有していること、および事業者に無過失責任、責任集中が定められていることが重要な要件である。

提言6 導入国の原子力損害賠償制度整備に向けての働きかけ

 国は、導入国が適切な原子力損害賠償制度を整備するよう働きかけること。

輸出許可制度への提言

 原子力関連の国際競争入札においては、輸出品目の輸出許可取得が入札時に完了していることが入札条件とされる場合が有り得るため、核不拡散を大前提としつつ、輸出許可制度の柔軟な運用を図ることが望まれる。

提言7 輸出許可手続きの柔軟な運用

 経済産業省は、輸出相手国が応札時の輸出許可書提出を要求してきた場合に対応し、原子力安全確保や核不拡散を大前提に輸出許可手続きのより柔軟な運用を図ること

輸出相手国の原子力安全・核不拡散への課題と提言

 今後新たに原子力発電プラントを導入する近隣アジア地域において、原子力平和利用に徹してプラントを安全に運転管理していくためには、核不拡散に係わる保障措置や核物質防護体制の整備、安全確保のための規制制度、および規格・基準、プラントの運転に係わる管理、検査、保守・補修、品質保証体系などの基盤整備が不可欠である。さらに、我が国としての協力方針を明確化したうえで体系的な協力を展開していくことも重要である。

 なお、二国間協力協定については、相手国における平和利用の確保、保障措置の適用、相手国から第三国への再移転の規制、核物質の防護措置などを確保することが主目的であるため、我が国からの原子力発電プラントなどの導入が具体化する段階で締結交渉を開始することが適当である。

提言8 輸出相手国の基盤整備に国および産業界の一体となった協力

 今後新たに原子力発電プラントを導入する国に対しては、保障措置や核物質防護体制の整備、安全確保のための規制制度、および規格・基準の整備、プラントの運転管理、検査、保守・補修、品質保証体系などの基盤整備について、国および産業界が一体となって協力していくこと。またこれらの国の国際原子力機関(IAEA)の追加議定書など核不拡散に関する条約などへの参加、原子力安全に関する条約などへの参加および輸出管理制度の整備、並びにその実施に対して支援すること

輸出向け原子炉の研究開発への課題と提言

 今後新たに原子力発電を導入する国には、最初から大型の軽水炉を導入するよりも比較的初期投資資金が少なくて済む経済性のある中小型炉を望む国もあると考えられる。現在、我が国における中小型炉の開発は、概念設計までは進められているが実用化にはまだ課題があり、プラント建設を正式提案できる段階にはないと考えられる。本開発は、単に途上国向けというだけでなく、2030年以降に予想される国内のリプレース需要を含めて、将来の原子炉出力規模の選択肢を提供することができる。さらに、国内で強く求められている高度な技術の維持・継承を図るうえでも有効である。

提言9 国際競争力のある原子力発電プラントの開発

 国および産業界は、国内原子力技術の維持継承を図りつつ、革新的技術の開発に取り組み、現在設計検討されている経済性のある中小型炉も含め、国際競争力のある原子力発電プラントの開発を行なうべきである。国は、その開発に対して産業界に有効な支援を図ること

国の首脳外交への課題と提言

 原子力発電プラントの輸出については、相手国の政治体制などにより政府外交が重要な役割を果たす国もあり、輸出先進国のフランス、ロシア、カナダなどは、政府首脳が自国の原子力発電プラントの採用働きかけを積極的に行なっているところである。

 他方、我が国も、2005年2月の中国の新規原子力発電所建設に対して、我が国原子力産業を最大限支援する姿勢を明確にするため、初めて経済産業大臣から支援書簡が中国政府に発出されるとともに、これに併せてJBICおよびNEXIにおいても、輸出信用供与の検討を開始する積極的な意図表明を行なうことにより、政府一体となった前向きの強いメッセージを中国政府に伝えた。

提言10 政府首脳による相手国政府への働きかけ

 政府レベルでの対応が重要となる国に対しては、政府首脳は、経済産業大臣の支援書簡のような我が国政府首脳による相手国政府への働きかけを今後とも行なうこと


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.