[原子力産業新聞] 2005年5月19日 第2283号 <3面>

[ウクライナ便り] チェルノブイリ資金に不正疑惑

【キエフ松木良夫】4月26日でチェルノブイリ事故発生から満十九年が経過したウクライナでは、同事故現場を上から覆うための新たなシェルターの建設を準備中だが、このところ建設資金が不当に横流しされているのではないかとの疑惑が持ち上がっている。

 4月25日にはニコライ・トメンコ副首相(首相の下に4人いる副首相のひとりで、人権及び社会政策問題担当)が、この件で検察当局へ捜査を求める方針を発表した。さらに4月28日付けの地元紙フトルニクによると、検察当局はチェルノブイリ原子力発電所に係わる63件の資金横流しの捜査を開始したとしている。

 新政府が捜査している金額は約1400万ドル(約15億円)で、同工事を請け負う民間企業が過去2年間にこれを横領したとして捜索を受ける模様。これ以外にも同地元紙は、チェルノブイリ事故被災者に渡るはずだった資金を含め1億7000万(約180億円)の資金横流し疑惑があるとしている。

 またフトルニク紙は、本年チェルノブイリ原子力発電所に支給されるはずの工事資金600万ドル(約6億3000万円)が、現在まで同原子力発電所側に届いていないとしている。

 事故で破壊されたチェルノブイリ4号機を覆っている現在の石棺を、さらに上から覆うための新シェルターは、おおよそ長さ257m、幅150m、高さ108mのアーチ型(かまぼこ型)の建造物となる。建設費は4億5000万ドル(約470億円)から6億ドル(約630億円)と言われる。

 当初の計画によれば2000年から工事を開始、2007年までに完成する予定だったが、工事開始が大幅に遅れている。昨年11月の同プロジェクトの発表では、新シェルターは2008年末までに完成することになっていた。

 その後大統領選挙の不正が発覚したことをきっかけに、政権交代が起き、新政府は、前政権による汚職と賄賂の疑惑を解消する一環として、こうした大型プロジェクトの見直しをはじめている。チェルノブイリ原子力発電所の新シェルターについても、しばらく新政府の動きを見守る必要がある。


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