[原子力産業新聞] 2005年5月19日 第2283号 <4面>

[原研と間組] 高耐熱高強度の中性子遮蔽樹脂 共同開発

 日本原子力研究所と間組は、300度Cの耐熱性やコンクリートを上回る強度を有する新しい中性子遮蔽樹脂を共同開発した。フェノール樹脂と炭化ホウ素の混合材を使用、ポリエチレンと同等の遮蔽性能があり、各種の原子力施設・機器への利用を期待する。

 現在、耐熱性が要求される中性子遮蔽材にはコンクリートや金属、比較的耐熱性が必要ない場合にはエポナイト(耐熱温度約200C)やポリエチレン(同80度C)が使用される。コンクリートなどは大掛かりな遮蔽が必要なため、耐熱性や遮蔽性能に優れ、軽量でコンパクトな遮蔽材料が求められていた。

 今回開発した中性子遮蔽樹脂は300度Cの耐熱性、15cmの厚みで中性子透過率約十分の一とポリエチレンに匹敵する遮蔽能力(コンクリートの約2倍)、コンクリート以上の強度などを併せ持つ材料。原研はフェノール樹脂と炭化ホウ素の成分量を放射線遮蔽計算により評価、間組がフェノール樹脂材の選定、成型温度、圧力などを試験し合成方法を決定した。

 核融合実験装置などでは真空容器の周囲の狭い場所に様々な構造物や装置が入り組んで配置されるが、新遮蔽樹脂は高温の真空容器に接近して設置できるため、スペースの有効利用が可能。併せてコンクリート遮蔽で必要な補強材が不要な点なども考慮すると、新遮蔽樹脂はコスト的にもメリットがあるとしている。


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