[原子力産業新聞] 2005年6月23日 第2288号 <3面>

[英科学技術会議] 原子力投資促進を勧告 「原子力オプション必要」

 英国政府の科学技術政策に関する諮問機関である科学技術会議(CST)はこのほど、原子力発電に関する研究開発と教育訓練への投資を促す報告書を発表した。資源制約と地球温暖化防止のため、これまでの電力供給インフラの大幅な更新が必要だとし、原子力発電と潮力発電のような二酸化炭素を放出しない、持続可能な大規模電源の研究・開発・実証と訓練に投資を行うため、政府がインセンティブを創設するよう求めている。

 「英国の電力供給戦略」と題されたこの報告書は、昨年5月に結成されたCSTのエネルギー・サブグループが作成したもの。

 2003年2月に英国政府が発表した「エネルギー白書」は、CO2放出量を2010年に20%、2050年に60%削減する目標を立てているが、これらは「達成し難い」と指摘。1997年以来、英国のCO2放出が減っていないだけでなく、今後、英国の原子力発電所の停止により、放出量増加が予測されている。

 報告書は、CO2放出量の少ない発電技術への大規模な投資が必要だとした上で、「政府は原子力発電のオプションを生かす必要がある」と勧告。このため、原子力に関する研究・開発・実証や教育訓練への投資を増やす必要があるとして、「政府は、民間企業と原子力発電リスクの分担や、水素研究とインフラへの資金注入などを通じて、民間によるエネルギー分野での研究・開発・実証への投資を促す必要がある」と勧告。

 原子力発電については、他の再生可能エネルギーのように、低設備利用率や送電網との接続性などの問題を持たない大規模技術との認識を示した上で、将来、原子力発電を採用するオプションを生かすためには、発電所サイト、技能、技術の三点が鍵になるとした。

 英国では2003年現在、総発電量3960億kWh中、887億kWhを原子力が発電。これらの原子力発電所の多くは、今後20年間に退役が見込まれる(=グラフ)ため、これがガス火力によって代替される場合、毎年970万トンのCO2放出が増えることになる計算だ。


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