[原子力産業新聞] 2005年6月30日 第2289号 <2面>

[ITER閣僚級会合] サイトを仏カダラッシュに決定

 国際熱核融合実験炉(ITER)に参加している日・米・EUなど六極は、28日、モスクワで閣僚級会合を開き、建設サイトを南フランスのカダラッシュとすることを決めた。日本は立地を断念する見返りに、全体の20%相当の機器製作や、920億円相当のITER関連施設の日本立地、ITER機構長の推薦権など、他極と比べて有利な参加条件を得られることになった。

 閣僚級会合には、日本から中山成彬・文部科学大臣、EUからポトチュニック科学・研究担当委員らが参加した。

 会合でまとめられた「共同宣言」では、今年5月に日本とEUが合意した、ITER立地国(ホスト国)と非立地国(非ホスト国)との役割分担に関する共同文書に「留意」、この役割分担を是認した上で、「ITERは仏国カダラッシュに立地する」と明記した。

 日本が立地を断念した理由について、立地交渉開始から約3年が経ち、交渉長期化は望ましくないとの認識が各極にあることを踏まえ、@1日も早くITER計画を開始すべきAITER六極の枠組みを壊すべきでないBサイト誘致のために今以上の財政負担は困難――など勘案。大局的な見地から、中山文科相が立地断念を表明したという。坂田東一・研究開発局長は、EU側が単独での核融合炉建設も辞さない態度を示していたため、六極体制が「ブレイクする」恐れがあり、EU以外で核融合炉を建設する場合の費用対効果、日本の財政事情、今後の科学技術国際協力への悪影響などを勘案して決断したと説明した。

 5月にまとめられた日本・EUの合意文書は、@ホスト国は建設費の50%、非ホスト国は10%を負担A機器装置の供給とITER機構の常勤職員の割合はホスト国40%、非ホスト国20%BITER機構長は非ホスト国が推薦CITER機構本部機能の分担――など、非ホスト国に配慮した内容。

 また「幅広いアプローチ」として、ホスト国、非ホスト国が各460億円を拠出し、総額920億円の予算で非ホスト国がITER関連施設を建設できる。施設としては、@ITER遠隔実験研究センターA核融合科学シミュレーションセンター――等の設置が有力。これらのサイトについて坂田局長は、「まず青森県と相談」し、それを踏まえて決めたいと述べた。また、核融合炉原型炉の国際研究チームによる設計研究プロジェクトも検討。原型炉では、日本が建設候補地を提案すれば、欧州は支持するとの合意も得られている。


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