[原子力産業新聞] 2005年6月30日 第2289号 <3面>

[米国] カルバートクリフス原子力発電所 ブッシュ大統領が訪問

 ブッシュ米大統領は22日、包括エネルギー法案の成立に向けて国民の支持を得るべく、メリーランド州のカルバートクリフス原子力発電所(PWR、88万kW2基)を訪れ、所内を見学した(=写真中央)。同大統領は発電所職員等を前に、「メリーランド州の人々は、この原子力発電所で働く人たちに感謝する必要がある」と述べながら、原子力発電や包括エネルギー法案の重要性等について次のように語った。

 この10年間で、米国のエネルギー消費量の伸びは、生産量増加量の40倍に達し、米国は重大な問題に突きあたっている。私は四年前にこの問題を指摘、迅速に処理すべく議会で盛んな議論が行われ、多くの政策が提起されたが、結論は出ていない。今こそ、消費者や産業界のために、議会は国家エネルギー戦略の要となるエネルギー法案を通過させるべきだ。

 エネルギーの節約、新技術の利用、石油、石炭、天然ガスなどの既存エネルギー源の効率的利用を進め、海外の石油への依存度を減らす必要がある。

 エネルギー法案は、太陽エネルギーや水素等、優れた技術の研究を促進する。水素は自動車燃料として使用でき、海外からの輸入が必要な炭化水素への依存度を減らす。ここ10〜20年で、水素燃料自動車を開発できると確信する。

 また、送電網を近代化して高信頼性を義務づけるとともに、電力供給者が送電線を敷設するさい、資金調達が容易になるような法整備が必要だ。

 エネルギー法案は、環境に優しい国産の電力を大量生産できる原子力の利用も促進する。今日、米国には大気汚染物質や温室効果ガスを排出しない原子力発電所が103基あり、国内電力の20%を生産している。原子力発電所がないと、米国では毎年ほぼ7億トン超のCO2が余分に大気へ放出される。これは自動車からのCO2排出量に匹敵する。

 原子力の利用拡大により、発電と環境保護の両方が可能なことを理解すべきだ。原子力は米国で最も安全なエネルギー源の1つだ。1970年代の原子力発電所では問題が起きたが、科学技術と原子炉設計が進歩し、安全性はかつてないほど向上した。作業員や責任者は十分な訓練を受け、原子力安全に努めている。

 原子力発電所を増やせば、よりクリーンで安全な国家となることを人々は確信し始めているが、1970年代以降、原子力発電所の新規建設はない。同時期にフランスは58基の原子力発電所を建設し、現在、8基の原子力発電所を運転する中国は、今から20年間のうちに、最低40基の原子力発電所建設を予定している。安全でクリーンで信頼のおける電力の生産に向けて、米国は原子力発電所の建設を再開すべきだ。

 3年前、新規発電所の建設に向けた政府と産業界による11億ドルの「原子力2010構想」が開始され、エネルギー省(DOE)は議会と協力して、原子力発電所許認可プロセスの改善に努めている。

 今後は、エネルギー法案にあるように、訴訟、お役所的妨害、不可抗力の遅延に備えて、米国で新たに建設される原子力発電所について、最初の四基に連邦政府がリスク保険のようなインセンティブを提供するのが合理的だ。原子力発電所の増設は、国の長期的な経済安全保障にとって有意義であることを国民に伝えたい。


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.