[原子力産業新聞] 2005年6月30日 第2289号 <4面>

[日本原燃] 六ヶ所再処理工場 ウラン試験順調に進捗

 日本原燃の六ヶ所再処理工場が昨年12月21日からウラン試験を開始して六か月が経過した。予想される190件のトラブル事例とその対策を事前に公表するとともに、試験開始以降、ホームページ上で毎日トラブル情報や実施状況を公開している。各建屋では主要装置単体の試験や調整が順調に進展、系統試験から系統包括試験へと進んでおり、前処理建屋では総合確認試験の手前の建屋統合試験に入った。「これまでに発生したトラブルは当初考えていたレベルの1割〜2割程度。COGEMA社などのトラブル情報の反映が寄与している」という再処理事業部の村井健志・技術部副部長(=写真左)と同じく中村裕行・再処理計画部副部長(=写真右)にウラン試験の進捗状況について聞いた。

―各建屋のウラン試験の進捗状況について

 1月中旬から試験を開始した前処理建屋では、3月中旬までに模擬ウラン燃料集合体のせん断溶解試験を終了し、先月23日から操業状態を想定した連続運転により処理能力の確認を行う建屋統合試験を開始している。せん断溶解試験ではPWR、BWR合わせて42体を処理したが、建屋統合試験では合計61体を処理する。これで総合確認試験前の処理は全て終了する。総合確認試験では4体を処理する。当初、せん断機でのせん断片の噛み込みなどのトラブルが想定されたが、通常の操作の範囲で順調に処理できている。溶解槽では、計装配管が詰まりやすいという現象があり、今後計装配管の位置を変更するなどの対策を実施する。

 分離建屋と精製建屋の主要装置はミキサセトラやパルスカラムなどになるが、これら装置の単体試験も所期性能を達成しつつ順調に進み、分離建屋では先月から、精製建屋では今月から、装置を組み合わせた試験の系統包括試験が進んでおり、近く外乱試験を開始する。

 ウラン脱硝建屋では霧状のウラン溶液を加熱しウラン粉末を製造する脱硝塔の試験とともに、今月からウラン溶液を脱硝塔に移送する前にウラン溶液の濃度を調整する濃縮缶の試験も開始した。

 4月から試験を開始したウラン・プルトニウム混合脱硝建屋では、ウランとプルトニウムの混合溶液をマイクロ波照射で加熱し、MOX粉末を製造する脱硝装置などの主要装置の試験を進めている。

 分離と精製建屋は7月末頃までに試験を終え、8月と9月は各セル(小部屋)の閉止作業を実施する。現在仮扉が付いているが、これを取り外しコンクリートで固め、各セルは密閉状態にする。これ以降、セル内はノーメンテナンス体制に移行し、総合確認試験やアクティブ試験を行う状態になる。

 低レベル廃液処理建屋、分析建屋、ウラン酸化物貯蔵建屋、ウラン・プルトニウム混合酸化物貯蔵建屋、低レベル廃棄物処理建屋、なども8月末頃までには総合確認試験前のウラン試験や試験運転を終える。併せて8月末頃にはハル・エンドピース貯蔵建屋、チャンネルボックス・バーナブルポイズン処理建屋、高レベル廃液ガラス固化建屋でも管理区域設定を行い、10月下旬頃から総合確認試験に入る予定で進んでいる。

 総合確認試験が全体の2割程度を占めるが、これを除くと進捗率はおよそ50%になっている。

―トラブルや不適合の発生状況は

 トラブル情報は安全協定報告事象や社会的影響の出るおそれのある事象のA情報、事象の進展または状況の変化によって報告対象や社会的影響の出るおそれがある事象のB情報、軽度な不具合等の事象のC情報に分けられているが、これまでに5件発生している。A情報が3件、C情報が2件。また、ごく軽微な機器故障や改善事項等の運転情報(不適合)は百数十件発生しており、それぞれ対策を実施している。

―技術部門として当初考えていたトラブルや不適合の発生レベルに対し、現在までの発生状況は

 ホームページに掲載する運転情報(A,B,C情報には至らないごく軽度な機器故障)は、当初想定していた件数に対し、ずっと少ない。我々の考えていたものの一割から2割程度と感じている。この再処理工場はCOGEMA社、BNFL社、核燃料サイクル開発機構などから約1200件の事故、トラブル、運転情報などを入手し、それを安全性、安定操業の観点から設備内容、運転手順などにフィードバックしている。この点がトラブルや不具合の低減に繋がっていると考えており、COGEMA社の技術者もUP3やUP800に比べずっと少ないと指摘している。主要装置のほとんどで必要な性能が出ている。

―ガラス溶融炉の状況は

 ガラス溶融炉は核燃料サイクル開発機構が開発した炉内電極からの電流によるジュール熱で加熱溶融する方式で、炉底に白金が堆積するという課題があった。改良型を導入し、堆積し難い温度コントロール方法を取り入れ、安定稼働が見えている。

―使用済燃料受入れ・貯蔵建屋のバーナブル・ポイズン取扱いピットからの漏水の状況について

 今月8日にバーナブル・ポイズン取扱いピットの漏洩検知装置で出水を確認した。検査の結果、漏洩箇所1箇所を確認しており、漏洩部分を切取り、研究施設へ送りその原因等を分析している。当面、使用済燃料の受入れ作業に優先して原因究明に全力を挙げている。

―ガラス固化体貯蔵施設の改造工事や設計変更の状況は

 特定廃棄物管理施設のガラス固化体貯蔵建屋B棟、再処理施設の高レベル廃液ガラス固化建屋、第一ガラス固化体貯蔵建屋の東棟および西棟について崩壊熱の除去解析で文献式の解釈を誤って計算していることが判明した。このうち高レベル廃液ガラス固化建屋と第一ガラス固化体貯蔵建屋の東棟はすでに建屋が出来ていることから改造工事が必要で、すでに設工認を申請した。建設工事が始まっていないガラス固化体貯蔵建屋B棟と第一ガラス固化体貯蔵建屋の西棟は設計変更し建設する。この設計変更の申請もできるだけ早い時期に行いたいと考えている。また二建屋は改造工事を実施し、確実な設備としてウラン試験の最終段階である総合確認試験に入る。

―英国の酸化物燃料再処理施設THORPの事故で六ヶ所再処理工場に反映させる点は

 THORPの事故は現時点でその詳細は判明していない。重量測定のために吊り下げられたタンクが配管に接続されている構造になっており、その配管に予想以上の応力が加わり金属疲労を起こしたとされるが、なぜ83立方mという量が漏洩するまで検知できなかったか、漏洩検知器のしくみなど基本的な点も不明。六ヶ所再処理工場では吊り下げ型のタンクはなく、漏洩検知装置も二重化している。

―品質保証体制は第三者外部監査も実施しているが

 現在、ロイド・レジスター・ジャパンによる第3回目の定期監査を実施している。これまでは業務がルール通り実行されているかという点の監査だったが、最近では魂を入れた監査というか、より深い監査内容になってきたと感じている。必要な部署との調整は十分かなどで、第三者の視点は重要と考えている。


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