[原子力産業新聞] 2005年7月14日 第2291号 <2面>

[原研] 核融合炉の省エネ運転技術 JT−60で開発

 日本原子力研究所はこのほどトカマク型核融合炉の省エネルギー運転法を開発した。プラズマ電流の75%をプラズマ自身が作り出す電流(自発電流)で維持、運転に必要な電力を大幅に低減する。こうした運転の技術的可能性を示したのは世界でも初めてで、将来の核融合炉の発電コスト低減に活かす。

 トカマク型核融合炉ではプラズマ維持のため、プラズマ内部に電流を流す必要があり、現在、長時間運転では外部から高周波や中性粒子ビームを入射することにより、この電流の大部分を流している。この方式は大電力を必要とすることから、所内電力を軽減するために、プラズマ自身が作り出す電流(自発電流)でプラズマ電流の大部分を維持する「高効率運転法」の開発が求められていた。

 自発電流割合の高いプラズマとするには、プラズマの乱れを制御し、圧力分布や電流分布などが落ち着いた状態とする必要がある。

 原研は今回、JT−60の特徴である多様な入射方向を持つ中性粒子ビーム入射装置を活用。プラズマの流れの分布を変化させて圧力分布を制御する手法を開発、プラズマの乱れの回避に成功した。その結果、自発電流割合75%の高温プラズマを七・四秒維持し、電流分布や圧力分布が一定に落ち着くことを世界で初めて確認した。

 これまで世界のトカマク型実験炉では高効率運転に必要な自発電流割合75%以上では、プラズマ維持時間は3秒以内に留まっていた。ITERではエネルギー増倍率五の連続実験運転が計画されているが、この場合でも自発電流割合は50%以上、連続高効率運転には同じく75%が必要とされる。

 この成果について原研では、高効率運転の技術的可能性を示したもので、核融合炉の発電コストの低減に展望を拓く成果としている。今回の成果は6月27日からスペインで開催のヨーロッパ物理学会で招待講演として発表した。


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