[原子力産業新聞] 2005年7月21日 第2292号 <1面>

[総合資源エネ調査会] 新原子力部会が審議開始

 経済産業省は19日午後、改組後初めてとなる原子力部会を開催(=写真)、部会長には田中知・東大院システム量子工学専攻教授が就任した。同部会では、今後約一年間をかけ、新原子力長期計画の具体化策を議論する。

 原子力部会は従来、総合資源エネルギー調査会の直下に置かれていたが、2001年10月以来開かれてこなかった。先週開かれた電気事業分科会で、従来の原子力部会を廃止し、新たに同分科会の下に原子力部会を置くことが決まり、約4年ぶりに審議を再開した。

 初会合で小平信因・資源エネルギー庁長官は、「地球環境問題はエネルギー問題とほぼ一体」とし、世界的に原子力の役割が大きいとの認識が進みつつあるとしながらも、運転中の原子力発電所のリプレースが始まる2030年頃に向けて、原子力産業の基盤維持を図る必要があると述べた。

 部会長に就任した田中氏は、「中長期的に原子力を確保していくための方策について、しっかりと議論することが重要」と強調。電力自由化の過程で、中長期的な原子力戦略について、関係者間の「真のコミュニケーションが少なくなり、難しい問題が先送りされがちな構図」を指摘、部会での議論を通じて問題解決を図りたいと述べた。

 原子力部会では、今後半年程度で技術開発の戦略プロジェクトへの重点化、人材の育成策、核燃料サイクルの技術開発、原子力の輸出戦略などの問題を議論。その後の半年間で、電力自由化と原子力、第二再処理工場と高速増殖炉での官民役割分担の考え方、原子力産業のあり方、放射性廃棄物の交換による返還や併置処分などの課題を議論し、部会報告書をまとめる。

 委員からは、第二再処理工場やFBRについて、政府の役割は中長期的な方向性を打ち出すことにあり、事業者は、研究開発や国際情勢等を踏まえて自主的に民間として取り組むとの意見、当面必要なのはマイナーアクチニド燃焼用の高速炉であり、その後にFBRが来るとの指摘がある一方、FBR開発は国が進めていくべきとの意見もあった。またバックエンドが一刻の猶予も許されない状況にあるとの指摘、メーカー代表からは、人材確保や基盤技術確保が困難になりつつあるとの発言があった。

 原子力部会の下には、放射性廃棄物小委と核燃料サイクル技術検討小委が設置されることが決まった。廃棄物小委では、高レベル廃棄物処分計画の改定、英国から低レベル放射性廃棄物を高レベルガラス固化体で代替して返還を受けることの妥当性、高レベル廃棄物とTRU廃棄物との併置処分など、来年夏頃までかけて審議する予定だ。


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