[原子力産業新聞] 2005年8月4日 第2294号 <2面>

[電中研] 鋳鉄製使用済み燃料キャスク ASMEが構造規格を承認

 電力中央研究所は1日、使用済み燃料の鋳鉄製キャスクが、初めて米国機械学会(ASME)から構造規格で承認を得たと発表した。鋳鉄製キャスクは、従来型の金属キャスクより、製造コストが1〜2割安くなるものと期待されている。

 使用済み燃料の輸送・貯蔵兼用の金属キャスクには、ステンレス鋼製、鍛造炭素鋼製、鋳鉄製がある。鋳鉄製キャスクは、底つき円筒のキャスク形状が鋳物で得られるなど、溶接が不要なため、製造工程が短く低コスト。しかし鋳鉄は、低温時にもろく、品質がばらつくなどの先入観から、ASMEでは規格化されておらず、日米などでは実用化が困難とされていた。

 電中研は国内メーカー等の協力を得て、低温での脆性に優れ、品質のばらつきを管理可能な球状黒鉛鋳鉄キャスクの開発・実証研究を行い、1992年のJIS材料規格、2001年の日本機械学会構造規格の制定に主導的な役割を果たした。球状黒鉛鋳鉄とは、鉄にマグネシウム等を添加することにより、鉄中の炭素成分が球状の黒鉛として分散している鋳鉄で、強度が高く塑性変形への対応力に優れている。

 電中研は、電気事業者の要請を受け、2001年に鋳鉄製キャスクをASMEに規格申請した。ASME構造規格は、日本だけでなく世界の原子力設備の技術基準の基礎となっている権威ある規格だ。

 鋳鉄キャスクについては、過去にドイツが米原子力規制委員会(NRC)への許認可申請に失敗しているため、ASME内には否定的な見方があった。また球状黒鉛鋳鉄をキャスク材料として使うことは、ASME規格にとって全く新しいことだったため、電中研は、実物大鋳鉄キャスクのマイナス40℃での落下試験(=合成写真)データなど、多くの材料・試験データを提示、説明した。ASMEでは、委員会・分科会で4年がかりの審議の末、このほど正式承認を得た。

 東京電力などが青森県むつ市で計画している中間貯蔵施設では、最終的に5000トンの使用済み燃料の貯蔵を計画。このためには使用済み燃料十トンを収納する輸送・貯蔵キャスク500体が必要だ。年間200〜300トンの使用済み燃料が搬入されることから、同施設向けだけでも年間20〜30体の需要があり、日本の鋳物メーカーは、キャスク製造に強い関心を寄せている。


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