[原子力産業新聞] 2005年9月22日 第2300号 <4面>

[サイクル機構] 「もんじゅ」改造工事が着工

 核燃料サイクル開発機構は1日、高速増殖原型炉「もんじゅ」(電気出力28万kW)の安全性向上を目指した改造工事に本格着工した。95年のナトリウム漏洩事故以来、プラントは停止しているが、国際的にも貴重な高速増殖炉研究開発の場の中核として、早期の運転再開が求められる。日本原子力研究所との統合を1月後に控え、復活へ向けて一歩前進した日の「もんじゅ」を取材した。

事故から着工まで

 「もんじゅ」は95年12月、電気出力約40%で試験運転中に二次主冷却系Cループでナトリウム漏洩事故が発生、その後、原子炉のナトリウムを約200℃で循環させてはいるが、プラント自体は停止状態で現在に至っている。

 事故後、科学技術庁(当時)の「安全性総点検チーム」による全般にわたる点検、改善方針を受け、2001年にナトリウム漏洩対策等を施す原子炉設置変更許可申請がサイクル機構より提出され、改造工事に向けた手続きが始まることとなる。そして昨年1月に原子力・安全保安院の設工認変更認可を受け、翌月に地元自治体の了解獲得、改造工事の準備を進めていたが、統合新法人発足を目前にしたこの9月1日、本格工事に入ることができた。

改造工事の概要

 この改造工事では、@ナトリウム温度計の改良A二次ナトリウム漏洩時の影響を緩和するための設備変更B蒸気発生器伝熱管の伝播型破損の影響を緩和するための設備変更――を主に行うもので、問題の温度計については、ナトリウムの流れによる振動を防止するため、温度計さや管を短くし段つき部のない改良型に交換、また、ナトリウム対策については、漏洩を早期・確実に検知する煙感知型および熱感知型の検出器設置、ナトリウム抜き取り機能の強化などを施す。

 1日に着手したのは、一次主冷却系上部室の電動弁新設に伴うモーター取り付けで、従来手動となっていたナトリウム抜き取りを中央制御室からの操作で可能にするものだ。

 今後の主要工程は、11月に二次冷却系ドレン配管切断工事、12月に二次冷却系温度計さや取り付け切断工事、来年3月にナトリウム漏洩箇所の二次冷却系配管取り替え工事をそれぞれ開始、07年初め頃までに全工事を完了し、その後、機能試験、プラント健全性確認試験などを約1年間かけて行う予定だ。したがって、「もんじゅ」の運転再開は、早くても08年初め頃になるとみられる。

所感

 当日案内を受けたサイクル機構広報担当者は、「事故後十年間、プラントはそのままだが、関わる人たちが全く入れ替わってしまった」という。改造工事着工式にはかつて「もんじゅ」に関わったOBたちも出席しており、そこには95年の事故当時FBR開発の中核にあった顔ぶれが並ぶ。弊紙2000号(1999年8月12日付)企画で「もんじゅ」を訪れた際、「安全審査に1年、工事に2年、事故が起こった時点でのラインに戻り、運転再開…。それまでに若い人の士気を維持しないといけない」と現場技術者に聞いた。それから六年が経ち、今漸く運転再開の兆しも見えてきたが、今後の工事・試験が予定通り、無事故でなされることは無論のこと、新法人設立後の効率的・効果的な業務運営体制の下、今後を担う人材の確保、地元の理解促進など、まだ課題がありそうだ。


殿塚理事長、着工に先立つ安全大会で 冷静さを忘れずに、「一呼吸」

 「もんじゅ」改造工事に着工先立ち1日、協力会社作業員ら関係職員800名余が集結し、今後の工程の安全と高品質の確保を誓う「安全大会」が現地で行われた。「防災の日」にも重なったこの日、関係一同は、改造工事がゼロ災害で遂行されることを祈願した。

 来月発足する統合新法人の理事長にも内定している殿塚猷一理事長(=写真)は冒頭、現場作業員らを前に、国内外で自然災害が絶えぬ昨今の状況から、「災害は忘れぬうちにやってくる」と述べる一方、「人災は努力によって防止できる」と訓示。これまで幾多の事故によって原子力開発が滞ってきた背景から、「過去の教訓を踏まえた安全確保の一層の強化」を訴えた。そのためにまず、「風通しのよい職場作り」を上げ、安全と高品質を生み出す労働環境整備の重要性を強調した。加えて、殿塚理事長は、過度の緊張感が却って安全意識に悪影響を及ぼしてしまうことを懸念し、本来の冷静さを失わぬよう、ゴルフで球を打つときを例として、常に「一呼吸」入れる習慣を持つよう一同に語りかけた。


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