[原子力産業新聞] 2005年9月29日 第2301号 <1面>

[書評] 「地球温暖化とエネルギー戦略」 一本松幹雄著

 著者の一本松氏は、関西電力社員を経て現在は福井県敦賀市にある「若狭湾エネルギー研究センター」の客員研究員。関電ニューヨーク事務所や国際原子力機関(IAEA)での11年間の勤務を通した、エネルギー関連の国際経験をベースに、新聞の記事等を素材にして、エネルギーと環境の課題についてまとめた。

 B5版250頁というコンパクトな本だが、エネルギー供給と環境分野での関心の高い項目が全て網羅されている。具体的数値や図を交え、分かりやすく解説しているので、この分野での最近の動きを知るための参考書的に活用できる。

 たとえば、石油や天然ガスの資源量について、米国や北海油田の現況に加え、カスピ海での新しい動きであるテンギスとカシャガン油田やパイプライン計画等のはなし、重要産油国の国情、さらにはオイルシェールやメタンハイドレード等の将来資源の可能性についてもまとめ、全体的視点からの現状と課題がよく理解できるようになっている。

 また、筆者の国際的経験や電力マンのバランス感覚から、「京都議定書の目標は達成可能か?」、「水素エネルギーの発展に手放しの楽観は禁物」、「資源戦争の悲劇を避けよう!」など、参考となる意見も紹介されている。南雲堂刊・1500円。


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