[原子力産業新聞] 2005年9月29日 第2301号 <3面>

[IAEA] 第49回総会開く エルバラダイ氏を再選

 【26日ウィーン=喜多智彦記者】北朝鮮やイランの秘密核開発など、世界の核不拡散体制が重大な挑戦を受けるなか、国際原子力機関(IAEA)の第49回総会が26日、ウィーン市内の国際会議場オーストリアセンターで始まった。

 総会はエルバラダイ事務局長の三選を全会一致で承認。同事務局長の任期は、今年12月から2009年11月へ延長される。また総会は、べーリーズのIAEAへの新規加盟を承認した。これらの案件は、先週開かれた9月理事会でも承認、総会に諮られたもの。

 IAEAの活動に関する総括演説を行ったエルバラダイ事務局長はまず、「ここ2年間、原子力発電に対する態度に大きな変化が見られた」と、世界的な原子力発電見直しの動きを指摘。世界のエネルギー需要の伸び、エネルギー・セキュリティの重視、地球温暖化への懸念が原子力への投資を促しているとした。

 近い将来の原子力発電容量の増加は、アジアと東欧で見込まれるとし、中国、インド、ロシアの積極的な原子力計画にふれた。さらに、欧州におけるEPR建設の動き、米国における米エネルギー省(DOE)と協力して新規原子力発電所の許認可プロセスを試す努力などにふれ、さらにはインドネシアとベトナムの原子力発電導入への動きなども紹介した。

 北朝鮮、イラン、リビアなどで次々に秘密の核開発計画や核技術の不法取引が露呈し、重大な挑戦を受けている核不拡散については、イランにおける過去の核開発の全容解明に向けて進展が見られるとしたものの、同国が8月8日以来、IAEA理事会決議に反してウラン転換活動を行っていることを指摘。イランの保障措置協定違反を認定した先週の理事会決議を踏まえて、イランに透明性を向上させるなど、国際社会の要求に応じるよう呼びかけた。

 イランの保障措置協定違反については多くの国が一般演説で懸念を表明。EUを代表して英国は、イランがIAEAに十分に協力していないとし、理事会決議に基づいて、同国がEUとの協議の場に復帰するよう要求。これに対してイラン代表のアガザデ副大統領は、一般演説の中で、核開発問題が不必要に政治化されていると反発。イランが核不拡散条約(NPT)に加盟しているにも関わらず、原子力技術の入手に大きな制限を受けているとした上で、IAEA理事会は国連安保理に通告する立場にないと反論した。


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