[原子力産業新聞] 2005年10月6日 第2302号 <3面>

[IAEA] 核燃料供給保証を提案 多国間枠組みも議論に

【9月30日ウィーン=喜多記者】国際機関を通じた核燃料の供給保証、および多国間による核燃料サイクルサービス(マルチラテラル・アプローチ)に関する議論が盛り上がっている。

米国がウラン供給保証

 米国は、ウラン濃縮及び再処理の開発を放棄している国を対象に、国際原子力機関(IAEA)が原子力発電所用核燃料の供給保証を行う体制の構築を目指す。これは9月26日、IAEA総会(=写真)に送られたボドマン米エネルギー省(DOE)長官のビデオメッセージの中で明らかになったもの。

 ボドマン長官は、「IAEAが保障措置下で供給保証を行えるように、17トンまでの高濃縮ウランを確保する」と述べ、これが「核拡散と戦いながら、世界での原子力発電の拡大を目指す」共通の目的に資するとしている。

 米国代表がIAEA総会で補足したところによると、この17トンの高濃縮ウランは、米国の国防用には余剰とされたもの。

 これが仮に90%高濃縮ウランとすると、減損ウランで希釈することにより、550トン弱の3%濃縮ウランを製造することができる。

 米国は、今後軍事用ストックパイルから除去されるウラン等を、追加の供給源とすることも検討すると述べている。

IAEAは多国間管理構想

 一方、エルバラダイIAEA事務局長は総会で、ウラン濃縮やプルトニウム分離などの機微な活動が、核不拡散体制の弱点だとして、これらの活動を多国間管理のもとにおくことを、改めて主張した。

 同事務局長は総括演説で、IAEAのみならず、ウラン業界と世界原子力協会(WNA)がワーキンググループを設置、米国も供給保証の検討を始めるなどの動きを指摘した。

 さらにバックエンド・サービスについても、世界50か国以上で、使用済み燃料が仮貯蔵施設で保管されている現状を指摘。今年7月にロシア原子力庁がモスクワで開いた国際会議で、多国間による使用済み燃料貯蔵・処分構想や、燃料リース、原子力発電所全体を含むフル・リース構想が議論されていることを指摘した。

日本は警戒

 これに対して、核燃料サイクル事業を既に進めている日本は困惑、警戒の面持ちだ。IAEA総会で日本代表を務めた七条明・内閣府副大臣(科学技術政策担当)は、マルチラテラル・アプローチについて、機微な技術等の拡散をいかに防止するかという問題意識に基づくもので、「わが国はこの問題意識を十分共有する」と言明、議論に積極的に参画すると述べた。

 しかしこの検討のさいには、これが国際的な核不拡散体制の強化に資するかどうか、また、日本などNPT上の義務を誠実に履行し、高い透明性を持って国際社会の信頼性を得て原子力の平和利用を行っている国の核燃料サイクル活動を「不必要に制約することにならないか」と釘を刺し、「十分に精査することが必要」と述べている。


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