[原子力産業新聞] 2005年10月13日 第2303号 <3面>

[ノーベル平和賞] IAEAとエルバラダイ氏に 核不拡散と安全で功績

 ノルウェー・ノーベル賞委員会は7日、2005年のノーベル平和賞を、国際原子力機関(IAEA)とエルバラダイ事務局長(63)に贈ると発表した。「原子力が軍事目的に使われることを防ぎ、また、原子力が可能な限り安全に使われるようにする努力」に対して、同賞が贈られるもの。エルバラダイ事務局長は受賞の報に接し、「感謝、誇り、そして希望を感じる」と述べた。

 平和賞はIAEAとエルバラダイ事務局長に均等に分けて与えられ、授賞式は12月10日、オスロ市市庁舎で行われる。

 ノーベル賞委員会は、「核兵器の脅威が再び高まる中、本委員会は、この脅威には可能な限り幅広い国際協力によって対処すべきであることを強調する。この原則は、IAEAと同事務局長によって最も明らかに実現されている。核不拡散体制において、IAEAは原子力が軍事目的に使われないよう管理しており、事務局長は核不拡散体制強化への新たな方法をひるまず、声を大にして主張している。軍縮への努力が行き詰まったように見え、核兵器が国家とテロリストグループに広がる恐れのある現在、また、原子力発電が再び、ますます重要な役割を果たすように思われる今日、IAEAの仕事は計り知れない重要性を持つものと言える」と、IAEAを選んだ理由を説明した。

 エルバラダイ事務局長は7日、IAEA本部での記者会見(=写真、IAEA広報部提供)で、今回の受賞が「我々の行ってきた仕事の価値と平和への貢献を証明するものだ」としながらも、「今後もなすべき困難な仕事は多い」と述べ、「我々がこれまで行ってきた仕事を、公正にかつ誠実に続けるようにという強力なメッセージ」だと述べた。

 同事務局長はさらに、ノーベル平和賞の受賞により、核兵器による威嚇ではなく、人々のセキュリティへの懸念を基礎とする、世界的なセキュリティ・システム構築への歩が速まるとの期待も示した。

 IAEAはこれまでも何度か、ノーベル平和賞の候補に挙がっている。今回エルバラダイ事務局長は、自宅で夫人とテレビを見ていて受賞を知ったという。

 国連機関がノーベル平和賞を受賞するのは8回目。最近では、2001年にアナン事務総長と国連本部が受賞している。エルバラダイ氏はIAEA4代目の事務局長。1997年に事務局長に就任、今年9月の総会で3期目の続投が承認された。


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