[原子力産業新聞] 2005年10月27日 第2305号 <1面>

[経産省] 海外へ濃縮ウラン供給も 原子力部会で説明

 経済産業省は25日、都内で総合資源エネルギー調査会・原子力部会の第四回会合を開いた。席上経産省は、国際原子力機関(IAEA)の核燃料サイクル多国間管理構想(MNA)や米国の核燃料供給保証提案に対して、「積極的な対応」を行うよう提案。具体的には、国際協力によるウラン鉱山開発、海外への濃縮ウラン供給や燃料成型加工サービスの提供などの将来構想を示した。

 25日の原子力部会では、国際核管理構想への対応、世界のウラン資源需給の展望と日本の対応について、経産省からの説明と議論が行われ、また、日本の原子力産業の国際展開について経産省が説明した。

 今年9月のIAEA総会で、エルバラダイ事務局長が原子力技術と核燃料の供給保証のための国際的枠組みの創設と、マルチラテラルな管理の枠組みの創設を提案。また米国代表も、濃縮・再処理を放棄した国を対象に、核燃料の供給保証を行う枠組みを創設することを提案、他の国に参加を呼びかけた。

 イランの核開発問題など、深刻化する核拡散と、このような供給保証や多国間管理構想の具体化を受け、非核兵器国中で唯一、商業規模で濃縮から再処理までのサイクル施設保有を国際的に認められている日本に対しても、経産省は「一律の規制を求める提案が広まる恐れがある」と懸念。「具体的な対案を示さなければ」日本が孤立し、サイクル施設の円滑な運転に支障を来す可能性もありうるとした。

 経産省は、各種構想の問題点を指摘する「受け身」の対応では「孤立するおそれがある」とし、我が国が何を貢献できるか検討するなど「積極的な対応」を行うよう提案。そのさい、米国との連携や、日本の周辺国のニーズ等を踏まえた対応を行うよう求めている。

 この上で、IAEAと米国が提案する「国際的な燃料供給保証体制の整備」を念頭に、日本が行える協力として、@公的機関によるファイナンス支援を用いた国際協力による鉱山開発A2010年導入目標に開発中の新型遠心分離機を活用した海外向け濃縮ウラン提供B国内で供給余力のある燃料成型加工――を指摘。

 また、日本による再処理サービスの提供は、第二再処理工場で「検討する余地」があるとする。

 経産省の柳瀬原子力政策課長は、日本が「塹壕に閉じこもっていると、孤立化する」として、多国間管理をめぐる国際的なルールメイキングに加わっていくことの重要性を強調した。

 一部委員からは、日本の立場をより強く主張すべきとの意見もあったが、多くの委員は、供給保証等の新たな流れに積極的に対応することに、前向きの評価を与えた。築舘委員は、濃縮・再処理について、将来的には日本の技術を利用して海外へのサービスにあたることもありうると述べ、国に枠組みの整備を求めた。秋元委員は、かつてIAEAの保障措置体制を「内側から」構築する立場にあった日本が、今では「外野に回っている」と指摘。「大変危険な状況だ」として、日本が積極的に関与するよう求めた。


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