[原子力産業新聞] 2005年11月10日 第2307号 <3面>

[放医研] HIMAC 小型RFQリニアックを開発

 放射線医学総合研究所は、このほど重粒子線がん治療装置(HIMAC)の入射器の全長を現在の約五分の一にできる小型RFQリニアック(=写真)を開発、ビーム試験に成功した。開発中の新型DTL(ドリフトチューブ・リニアック)などと組合わせ、今年度中に普及型HIMAC用入射器の総合試験を実施する予定。

 HIMACの加速器は入射器と主加速器から成り、入射器はイオン源、RFQリニアック、DTLで構成する。炭素イオンを光速の約七割まで加速する性能が必要なため、従来の一般的な加速器では装置が大型化し建設費も巨額になる。

 今回、試験に成功したRFQリニアックは、加速対象を炭素イオンに絞り込み最適化することにより全長2.5m、直径0.4mと現在に比べ約三分の一の小型化を実現。開発中のDTLもビームの収束と加速を高周波加速電場のみで行う世界初のAPF型とし、全長3.5m、直径0.4mと同じく約七分の一、約五分の一の小型化を達成する見通し。

 この組合わせにより、入射器の全長は現在の32mから6mに短縮できる。併せて、現在のアルバレ型DTLでは1MW級高周波増幅器を3台必要とするが、新DTLは500kW級1台のみで、大幅な省電力化が可能になる。

 放医研では昨年度から2か年計画でHIMAC普及に向け、重イオン加速器の小型化の研究および普及型装置の全体設計を進めている。すでに昨年3月には永久磁石型ECRイオン源の開発にも成功しており、今年度中にこれらを組合わせた高効率小型入射器の性能を確認する。


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