[原子力産業新聞] 2005年11月24日 第2309号 <3面>

[米DOE] 弾みつく米新規原子力構想

 米国で新規原子力発電所の建設を目指す動きが加速している。

 この流れを受けて米エネルギー省(DOE)は17日、今年8月に成立したエネルギー政策法にある「リスク保険」の運用規則について、12月15日に公聴会を開くと発表した。

 「リスク保険」条項は、原子力発電所建設者の責任ではない理由により建設が遅延した場合、債務の元本および利息を補填するというもの。代替電力購入費等も認められる。最初の2基の原子力発電所については、5億ドルを上限として損害額の100%、3〜6基目に対しては2.5億ドルを上限として50%まで補填が認められる。DOEは、保険への政府予算と民間出資の割合、補填の範囲、担保される施設の種類、紛争解決方法など、リスク保険の規則を提示し、公聴会で意見を求める。

 一方、新規原子力発電所に向けた動きも加速している。テネシー川流域開発公社(TVA)はこのほど、アラバマ州にある同社のベルフォンテ・サイトにABWRを2基建設した場合、1基あたり22億ドル(約2600百億円)で、40か月間かけて建設が可能との報告をDOEに提出した(=想像図)。この調査は、DOEの「原子力2010計画」のもと、同省の補助を受け、東芝、GE、USEC、ベクテル、グローバル・ニュークリアフュエル・アメリカの各社が作るコンソーシアムが、13か月間と425万ドル(約5億円)をかけて行ったもの。

 これによると、137.1万kWのABWRを建設した場合、建設費は1kWあたり1611ドル、同炉を146.5万kWに出力増強した場合、kWあたりのコストは1535ドルに下がる(いずれも正味出力)。

 TVAのベルフォンテ・サイトについては、新規原子力発電所建設を目指すコンソーシアム「ニュースタート」が9月22日、新規原子力発電所候補サイトとして、ベルフォンテと、エンタジー社のグランドガルフ原子力発電所サイトを選んでいる。ニュースタートは、6候補サイトから二サイトを選んだもので、グランドガルフにはGEの経済的簡素化BWR(ESBWR)を、ベルフォンテにはウェスチングハウスのAP1000を建設することを前提に調査。2007〜2008年に、米原子力規制委員会(NRC)へ建設・運転一括許認可(COL)申請を提出することをめざしている。エンタジー社はこのほかに、リバーベンド原子力発電所サイトにESBWRを建設することで、独自に調査を続けている。

 一方、3基の原子力発電所を運転するデューク・エナジーは、AP1000・2基の建設を目指し、独自にサイト調査を行っている。10月26日に明らかにしたところによると、同社は24〜30か月以内に、NRCへCOL申請を行う予定だ。


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