[原子力産業新聞] 2005年12月1日 第2310号 <2面>

[原子力機構] JMTR利用検討委を設置

 日本原子力研究開発機構は、同機構の材料試験炉(JMTR=写真)と材料照射試験施設のあり方を検討するため、「JMTR利用検討委員会(委員長=宅間正夫・日本原子力産業会議副会長)を設置、このほど第1回会合を開いた。

 JMTRは軽水減速冷却タンク型炉で熱出力は50MW、1968年3月に初臨界。発電炉等で使う燃料や材料を中性子で照射し、その耐久性や適正を実際に試験する「原子炉を作るための原子炉」として運転してきた。現在は50MWで30日間連続運転し、これを年間6回(サイクル)行っている。原子炉材料試験のほか、ラジオアイソトープ製造や核融合炉材料の照射試験等にも使われてきた。

 JMTRについては2003年5月、原子力二法人統合準備会議の場において文部科学省が、研究施設整理の一環として、老朽化等を理由に廃止の方針を打ち出した。しかし委員の間から、代替施設が無いなどの意見が出され、原研(当時)は「JMTR将来計画検討委員会」を設け検討。同委員会は昨年4月、JMTRを2006年頃から3〜4年かけ改造、原子炉部分の改修には約90億円が必要であり、改修後15年間程度の2025年頃まで運転が可能との報告をまとめている。

 一方、原子力機構の第1期中期計画では、JMTRを来年度中に運転を停止、その後の措置については、2010年までの中期計画期間中に廃止の準備を行うとされている。しかし、わが国の原子力発電を担う軽水炉の長期利用が必須となっている状況から、軽水炉技術を支えるためには照射施設が必要との意見が各界から表明されている。

 このような状況を受け、今回設置された利用検討委員会では、電気事業連合会、日本電機工業会、原子力安全基盤機構、RI製造者、大学等の「産官学研」のユーザーを中心メンバーとし、材料照射試験に対する利用ニーズ等を具体的に検討。この結果を踏まえて、JMTRの廃止に至までの効率的なあり方をまとめる。委員会は、東京と茨城県で開催、今年中に3回、来年に1回開き、1月末までに報告書をまとめる予定だ。

 今回はユーザーを中心とした委員会で、JMTRの存続を前提とはせず、材料試験やその他の照射ニーズ、JMTRの使い勝手や使用料金等も議論する。

 JMTRについては、材料照射以外に、シリコン・ドーピングやテクネチウム・ジェネレータ製造等にも利用可能。シリコン・ドーピングの場合、JMTRで国内需要の半分、世界需要の30%程度を処理することも可能という。


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