[原子力産業新聞] 2005年12月1日 第2310号 <3面>

[米国] 再処理路線へ復帰か 議会主導で開発予算 廃棄物処分量低減に効果

 米国が再処理路線への復帰を鮮明にしつつある。再処理は処分すべき高レベル廃棄物の量を減らし、使用済み燃料の蓄積問題と処分場立地の困難さの解決の一助となるという認識がある。米議会は米エネルギー省(DOE)に対し、再処理計画の策定、技術の選択や、施設サイトの選定作業などの加速を求め、カーター政権以来、28年ぶりの再処理への本格復帰となる可能性がある。

 米議会は11月7日、新たな「使用済み燃料統合リサイクル計画」施設のサイト選定調査活動に5000万ドル(約60億円)、先進的核燃料サイクルイニシアティブ(AFCI)に8000万ドル(約96億円)を割り当てる2006会計年度エネルギー・水資源開発歳出法案を承認した(本紙先週号3面参照)。

 再処理技術について議会は、全米で蓄積されている使用済み燃料の処理のため、再処理技術の開発を加速するように求め、DOEが2006年3月1日までに使用済み燃料再処理技術に関する計画を提出し、2007年度末までに再処理技術を選択するよう求めている。

 具体的には、議会はDOEに、使用済み燃料の再処理・リサイクル技術の実証、リサイクル施設の計画、環境影響声明の作成を指示。また、施設を受け入れる4か所の地方自治体に対して2000万ドルを提供、2010年の施設建設開始を目標に、サイト選定作業を2006年6月末までに開始するよう指示した。

 米国では、1970年代、サウスカロライナ州にAGNS社が商業用のバーンウェル再処理工場(1500トン/年)を建設、1975年にほぼ完成したが、1977年にカーター政権が国内再処理の中止政策を打ち出し、同工場の建設も中止されていた。

 一方、AFCIへの予算は、DOEが求めていたより1000万ドル多く、改良型の再処理と消滅処理の研究開発について、実証規模施設の設計活動を加速しようというもの。議会は、2006年度中に概念設計を終え、2007年度中に前工学設計段階に入るよう求めている。

 

 2003年1月に発表されたAFCIでは、長期的な計画として、米国における使用済み燃料の量と毒性、使用済み燃料中のプルトニウムによる核拡散の可能性とエネルギー源としての利用価値などから、再処理と超ウラン元素の消滅処理などを目指している。

 下院エネルギー・水開発小委員会のD・ハドソン委員長(共和党、オハイオ州)は、ユッカマウンテン処分場の重要性は変わらないとしながらも、「米国が今世紀中に、さらに8か所の処分場を開発しなくても良いように、使用済み燃料に関して他のアプローチを追求することは非常に重要だ」と述べている。P・ドメニチ上院議員(共和党、ニューメキシコ州)は、「我々は、処分場へ送る使用済み燃料の量を減らす方法を見つける必要があり、DOEが使用済み燃料のリサイクルを徹底するよう指導する必要がある」と述べている。

 DOEの民生放射性廃棄物管理局の次期局長に指名されているW・スプロード氏は、「どの道を行くにせよ、最低1つの高レベル地層処分場が必要だ」と述べて、ユッカマウンテン処分場計画は予定通り進めるよう求めている。


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