[原子力産業新聞] 2005年12月8日 第2311号 <3面>

[英国] 原子力支持へ政策変更 ブレア英首相 英国産業連盟年次大会で示唆 夏頃にエネ政策を発表

 英国産業連盟(CBI)の年次大会で11月29日に講演したブレア英首相は、新たに委員会を設置し2006年初夏頃をメドに、新規原子力発電所建設の促進の可否も含めた、エネルギー政策を発表すると述べた。同首相は、運転中の石炭火力および原子力発電所の退役による穴を埋めるには、再生可能エネルギーでは十分でないとし、またCO2放出量の抑制の面からも、原子力発電支持への転換を強く示唆した。

 ブレア首相は英国の経団連にあたるCBIで、規制緩和、失業、年金問題など、幅広い経済問題を扱った演説の中でエネルギー政策にふれ、@エネルギー価格の高騰Aエネルギー供給の危機B気候変動への懸念――等から、世界中でエネルギー政策が熱心に再検討されているとした。

 特に地球温暖化防止に関して、京都議定書が2012年に失効した後は、主要国全てを縛る新たな取決めが作られるだろうとし、各国は将来、きれいなエネルギー源を求めるとともに、エネルギー源の多様化と自立を目指していると述べた。

 英国からのCO2放出について、最近増加が見られるが、2010〜20年には更に増加すると予想。さらに2020年前後には、英国の発電量の30%を占める石炭火力および原子力発電所の退役が予定されており、「これらのうち幾分かは再生可能エネルギーで代替できるだろうが、全てではない」とした。

 その上でブレア首相は、エネルギー白書の中期及び長期目標への進展具合を検討するため、M・ウィックス・エネルギー相を長とする委員会を設置したことを明らかにした。同委員会は来年初夏頃を目標に、英国が新規原子力発電所建設の促進を行うべきかも含めて、エネルギー政策声明を作成する。

 ブレア首相のこの演説に対して、CBIのD・ジョーンズ事務局長は、原子力発電に関する議論を歓迎、「英国は、緊急に原子力発電に関する明確な決定を含む、新たなエネルギー政策が必要」とし、ブレア首相がこれを約束したことを歓迎。「我々は全国規模で大規模かつ客観的な議論を行い、明確な結論を出す必要がある。英国の競争力のためには、安価で安定したエネルギー源が長期的に必要だ」と述べている。

 CBI年次大会でのブレア首相の演説の直前、グリーンピースの構成員が会場に侵入。会場の天井に登り、「原子力―誤った解答」と書いた垂れ幕を掲げ、会議を妨害、逮捕された。

 これに対してD・ジョーンズCBI事務局長は、「CBIの会議は自由でオープンな議論のための場だが、グリーンピースは真の議論には興味がない。彼らの目的は議論を押しつぶし、止めさせることだが、それは完全に失敗に終わった」とコメントした。


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.