[原子力産業新聞] 2005年12月15日 第2312号 <2面>

[電力中央研究所] 新超音波探傷試験法を開発

 電力中央研究所は11月30日、従来の非破壊検査手法に比べて簡便、迅速、かつ低コストで傷の深さを測定できる、新しい超音波探傷試験法「SPOD法」を開発したと発表した。

 火力発電所や原子力発電所などにおいて、配管の溶接部などで生じる傷の深さを測定する際、これまでは「端部エコー法」や「TOFD法」(Time of Flight Diffraction=飛行時間解析の略)などが用いられてきた。しかし、「端部エコー法」は深さ測定の操作が煩雑であり、また「TOFD法」はステンレス鋼製などの厚肉構造物に適用できないといった課題があった。

 電中研の開発した「SPOD法」は、斜角探触子により傷に超音波を入射し、傷からの回折波を傷直上に配置した垂直探触子で受信するのが特徴。受信されるエコーは、直接傷上方に伝搬する成分と、底面で反射されて上方に伝搬する成分によるエコーであり、これらエコーの時間差から容易に深さサイジングを行うことができることから、電中研では従来手法の課題を解決し、安価な装置でより簡単に短時間で金属内部の傷の深さを正確に求めることが可能としている。なお同手法は各種配管の他、橋梁などの大型鋼構造物の超音波探傷にも利用が出来るということだ。

 なお電中研ではSPOD法について、@同研究所が既に開発している超音波伝搬シミュレーションによりSPOD法の測定条件を最適化し、更なる探傷精度(SN比)の向上を図るA板や直管以外の「TOFD法」が適用できない部位(配管の曲がり部)などへの適用性を明らかにするB実機で発生が確認されている応力腐食割れなどの傷に対する適用性を明らかにする――ことを、今後の課題として挙げている。


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