[原子力産業新聞] 2005年12月15日 第2312号 <4面>

[2005年回顧] 実り多かった2005年 サイクル関連諸課題にメド

 原子力基本法制定から50年という節目の年の2005年は、原子力にとって前進の年になった。エネルギー資源の需給逼迫による原油価格上昇などからエネルギー・セキュリティーの重要性が見直され、京都議定書発効など地球温暖化防止から、世界的に原子力が再評価される中で、原子力政策大綱が策定された。六ヶ所再処理工場のウラン試験が進捗し、MOX燃料加工工場や使用済み燃料中間貯蔵施設の立地が決定し、プルサーマル計画への取組みが進み、「もんじゅ」の改造工事も始まった。

 原子力への信頼感や安心感が広がり、様々な課題も解決したとは言えないが、前進を印象付ける動きが多かった。縺れた糸を解きほぐし、不透明さの打開に向け大きな成果を挙げた1年といえる。

 今年、原子力界が大きな関心を寄せたのは原子力政策大綱の行方だった。特に注目を集めた核燃料サイクル政策では、昨年までに再処理路線堅持が決定された。今年に入り原子力発電の役割では、「2030年以後も総発電量の30〜40%程度という現在の水準か、それ以上の供給割合を目指すことが適切」とすること、FBRでは、「経済性等の諸条件が整うことを前提に、2050年頃から商業ベースでの導入を目指す」などを盛込むことを決定した。

 10月には、「政府は原子力政策大綱を原子力政策に関する基本方針として尊重し、原子力の研究、開発及び利用を推進することとする」と閣議決定。今後の施策を進める上で大綱の重みが一層増すこととなった。原子力委員会の努力を讃えたい。

 大綱決定を受け、これに盛り込まれた各課題の具体策の検討も始まった。経済産業省の原子力部会、文部科学省の原子力分野の研究開発に関する委員会が始動。原子力部会では日本型次世代軽水炉開発のナショナルプロジェクト、立地振興策、人材育成、原子力産業の国際化、核燃料サイクル施設の国際管理構想への対応などの審議が進む。同部会からの要請を受け、「検査の在り方に関する検討会」も再開、事業者のインセンティブが活きる規制体系を目指した審議を開始した。

 原子力分野の研究開発に関する委員会のテーマはFBRサイクル、核融合、量子ビームテクノロジーなどの具体的施策だが、今年は「もんじゅ」、ITER(国際熱核融合実験炉)で大きな動きがあった。

 「もんじゅ」は2月に福井県と敦賀市から改造工事の事前了解を得たが、5月には設置許可処分の無効を求める行政訴訟で、最高裁が国側勝訴の判決を言い渡し、20年にわたる「もんじゅ訴訟」が決着。ナトリウム漏洩事故から10年、運転再開に向け9月に改造工事が始まった。旧動燃の事故隠しなど、当事者による行為に端を発しているとは言え、それにしても10年間、改造工事を含めると12年間という年月は長過ぎる。この事故を契機に、情報公開の在り方など教訓として得たものも多いとされるが、これほどの貴重な時間の犠牲が本当に必要だったのか、という思いは強い。改造工事を終え、運転再開により所期の目的を達成することを期待したい。

 ITERは、本体をフランスのカダラッシュに、ブロードアプローチの拠点「国際核融合エネルギー研究センター」を青森県・六ヶ所村に建設することが決まり、また、ITER機構長に池田要氏の就任が決まった。

 青森県は核燃料サイクル政策の要の施設を担っているが、今年、新たにMOX燃料加工工場や中間貯蔵施設の立地が決定した。日本原燃のMOX燃料加工工場は2007年着工の12年竣工、東京電力と日本原子力発電が設立したリサイクル燃料貯蔵施設は10年までの操業を目指す。昨年末からウラン試験を開始した六ヶ所再処理工場も、大きな視点で捉えれば進捗を見た。バックエンドでは新しい法律が成立し、制度面も整備された年になった。

 ここ数年、停滞感の強かったプルサーマル計画への取組みも活発化した。九州電力・玄海3号機、四国電力・伊方3号機、中国電力・島根2号機、中部電力・浜岡4号機で具体的計画が動き出した。各社とも地元の理解活動に全力を挙げており、様々なかたちで公開討論会や説明会が開催された。来年にかけて各地元自治体がどのように判断するかが注目されるが、安全確保を大前提に、プルサーマル計画の進展を望みたい。

 原子力関係機関の改革も盛んに行われ、日本原子力研究開発機構の発足、日本原子力技術協会の設立など、原子力技術・産業基盤の強化へ向けた取組みが行われた。

 一方、海外では米国が再処理路線への復帰を探り始めた。処分すべき高レベル放射性廃棄物の量を削減し、使用済み燃料の蓄積問題と処分場立地の困難さの解決の一助にしようというのが表向きの理由だが、取り出されるプルトニウムの核燃料としての価値にも注目、「リサイクル」することもうたう。1977年に当時のカーター政権が、米国内での再処理中止政策を打ち出し、ほぼ完成していた再処理工場の建設も中止した米国が、政策を変更する可能性が見えてきた。

 また、IAEAのノーベル平和賞受賞、核燃料サイクル多国間管理構想や米国の核燃料供給保証提案など、核不拡散と原子力発電の両立を模索する動きも盛んであり、わが国の協力方策も含めて今後の動向が注目される。


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